【映画評】ドラゴンクエスト ユア・ストーリー
さて、これまで避けてきたんだが、とうとうこの日がきてしまった。この映画の感想を書くという日が。いきなり結論から言うと、この感想を書くためだけに、このブログのカテゴリーを「おすすめ本&映画」から「書評・映画評」という固い表現に変更せざるを得なかった。なぜか。おすすめできない映画だからである。でも、この映画の感想は書かなければならない。なぜか。それが過去の自分に対するせめてもの償いだからである。気が重いが、この映画に対する僕の気持ちをさらけ出そうと思う。
※注)ネタバレについて:この文章は、ある程度のネタバレを含みます。どんな軽いネタバレも見たくないという方は、サクッと「戻る」ボタンを押してネタバレを回避してください。そして映画を鑑賞した後に、この文章に戻ってきてください。
さて、ネタバレに対する予防線を張ったところで、張り切って感想を書いていこうと思う。ここまで読んでいただいた方には既に伝わっていると思うが、僕はこの映画に対して最低ランクの評価、というよりもはや憤りを覚えることになった。タイムマシーンがあるなら喜んで見る前の世界に時間を設定して戻ることだろう。だがそれは出来ない。なので、ここで愚痴りまくってスッキリしてさっさと次に行こうというわけだ。何がダメだったかというとたくさんあるわけなのだが、特に僕の琴線に触れるガッカリポイントがあったので、いくつかを紹介していこうと思う。
ガッカリ1:BGM
まずは軽めにここから始めよう。BGMである。簡単に言うと、ドラクエ5以外のドラクエシリーズのBGMがふんだんに使用されていたのだ。別にそれを悪いと思わない人も多いと思うが、僕にはこれが耐えられなかった。映画のストーリーの盛り上がる場面等で、別のシリーズのBGMが流れるわけである。「いや、この映画、ドラクエ5の映画ですよね?」感がすごいのだ。更にいうと、別シリーズのドラクエに対しては、ドラクエ5とは別の思い出が心の中にしまわれているわけだ。それを映画中に無理やり引っ張ってきて、ドラクエ5の思い出の中にねじ込もうとする行為は僕には耐えられなかった。このBGMを無駄に使いまくる効果によって、僕は映画中、終始違和感を抱えながら鑑賞せざるを得なかったのだ。
ガッカリ2:声優
端的に言うとプロの声優を起用していない。各キャラクターの声は、俳優という自身の顔、声、肉体、演技を総合的に評価される職業を起用している。意味が分からない。これ、誰か反対する人いなかったのか。まぁ簡単に言うとアマチュアが各キャラクターの声を担当してるのだ。それってプロの仕事としてどうなの?監督さん?わざわざ作品の完成度を下げる判断を下した理由が知りたい。自分の経歴に泥を塗りたかったのか。
ガッカリ3:シナリオ
ドラクエ5という大作を数時間の映画にまとめるために、大幅にシナリオに修正を入れる必要があるのはわかる。ある程度のシナリオ修正は覚悟のうえで鑑賞したつもりだ。だが、修正度合いが僕の予想のはるか斜め上をいっていた。いや、主人公の双子のうち女の子いないやん。な、なぜ?監督は「女の子はドラクエに興味ない」という認識なのだろうか。そこを欠けた状態で上映する勇気には脱帽するしかないが、最後に全ての思い出をゴミ箱にぶち込むかのようなオチを用意しているのであれば、シナリオ上原作に忠実であるべきだと気が付かないのだろうか。オチに関しては詳しく書けないが、あのオチがある以上シナリオは原作とほぼ同じにする必要があるはずだ。
ガッカリ4:オチ
思い出しながら書いていたらムカムカしてきたので、これで終わりにしようと思う。最後にして最大のガッカリポイント、つまりオチだ。上でも少し触れたが、この映画(及びドラクエ5のファンの思い出)をぶち壊す全ての原因となっているのが、この映画の「誰でも思いつくけどそれだけはやっちゃダメだろう」というオチである。正直、僕はこの映画を見る前に、既に鑑賞済みの友人から「オチはやばい」という情報を得ていた。まぁ「おれたちの冒険はこれからだ!」みたいなオチが待っているのだろうと思っていたのだが、正直そのオチをはるかに上回るゴミを見せつけられて当惑した。一瞬何が起こったのか脳が認識できず、周りをキョロキョロするという稀有な体験が出来るので、お金と時間がどぶに捨てるくらい余っている人はその稀有な経験を積むために鑑賞するのも逆にありかもしれない。まぁ僕はそこまでの人間ではないので、お金と時間を消費して思い出を汚されるという斬新な経験をしたわけだ。
最後に
書きたいことをバシバシ書いてきた。実は僕は大のドラクエファンであり、学生時代はドラクエで思い出が詰まっているといっても過言ではない。その思い出がこんな形でゆがめられることになるとは思いもしなかったので、何とか言語化しておきたかったわけだ。まぁ、ドラクエ5をプレイしたことがある人なら分かると思うが、あの作品を映画にするのであれば3部作は必要になるわけで、それを1つにまとめようとする試み自体が出発点から破綻しているというわけだ。ただ、唯一映画を観て良かったと思うことがある。それは、この年になって改めてドラクエ5のシナリオを振り返ると、学生時代とは全く違った捉え方をしている自分がいることに気が付けたことだ。
この映画を観て、ドラクエへの興味を失ってしまう子供がいないことを望む。