USCPAの対策について、今回は非常に広い出題範囲を持つUSCPA試験の受験に関して「分野を捨てる」ということについて書いていきたいと思います。果たして「ある分野を捨てる」、つまり全く勉強しないという対策はどのような結果をもたらすのでしょうか。
分野を捨てる?
僕が最初に「何かの分野を捨てる」という考えに出会ったのは、専門学校のサイトなどに書いてある「合格体験記」を読んだときでした。僕は勉強に疲れたときに合格体験記を読むのが好きだったのですが、たまに以下のような記載を見かけました。
- 「FARの勉強時、政府会計は全く勉強しませんでした。」
- 「○○の分野は範囲が広いのに配点が低いため、常識と勘で解きました。」
このように「○○なので、○○の分野は勉強しません」ということを、分野を捨てると言います。大学受験をしたことがある人は分かると思いますが、「漢文は捨てた」といったイメージですね。このような合格体験記を読んでいた当時は「そんなものなのか」と納得していたのですが、今となっては分野を捨てることは完全に間違っていると断言できます。以下、その理由を書いていきます。
捨てる分野を作る危険性
USCPAの試験において、ある分野を捨てることは、合格の可能性を捨てていると同じようなものです。「でも、ある分野を捨てて合格している人もいるじゃないか」と思われる人もいると思いますが、合格体験記を書いた人が本当にその分野を勉強しなかったのかということは誰にも証明できません。そのような意見に踊らされて勉強しない分野を作り、合格を「運任せ」にするより、きっちりと全体を勉強して「実力」で合格を勝ち取りましょう。USCPAは実力で合格できる試験です。「勉強しなかったけど合格できたよ自慢」に参加する必要はないのです。また、勉強して合格したほうが遥かに格好良いです。
ここからは、USCPA試験の構成から、なぜ勉強しない分野を持つことが危険なのかについて書いていきます。
USCPA試験の構成
USCPAの試験は「テストレット」と呼ばれる問題群を数個解いて、その合計点で合否を判定するものとなっています。詳しくは「USCPAの出題形式」をお読みください。そして重要なのが、各テストレットを解き終わった後に、そのテストレットの出来具合によって、次のテストレットの難易度が変わると言われている点です。ちなみにですが、僕はこの難易度の変化に全ての科目において全く気が付くことが出来ませんでした。(参考記事:テストレットの難易度変化について)
テストレットの難易度と点数
簡単に説明しますと、最初のテストレットの正答率が良ければ次のテストレットの難易度が難しくなり、逆に悪ければテストレットの難易度は変わらないままと言われています。ここでいう「テストレットの難易度」というのは、テストレットに難易度の高い問題がどれだけ多く含まれているのかの割合という意味になります。つまり、難易度が高いテストレットは難易度が高い問題が多く含まれ、難易度が普通のテストレットは難易度が高い問題がそこまで含まれていないということです。重要なのが、USCPAの試験では難易度の高い問題の方が配点が高いと言われており、USCPAで高得点を出したい人は、初めのテストレットで高い正答率を出して、次のテストレットを難易度の高いテストレットにして、そこでも高い正答率を出して高得点を狙うというステップを踏む必要があることです。以下はイメージ図になります。
ある分野を捨てた場合
試験を開始して最初に解くテストレットは、比較的基礎的な問題で多くの問題が構成されています。ここで注意したいのは「難しい分野」が出題されないというわけではなく、全ての分野から基礎的な問題が出題されるということです。例えば、連結会計が難しいから最初のテストレットには出題されない、というわけではなく、連結問題の基礎的な問題が最初のテストレットに含まれるということです。難しいか簡単かの判断は分野で判断されるわけではなく、問題の内容によって決まる、ここが非常に重要なポイントとなります。つまり、分野を捨てた場合、その分野において基礎的な問題を正解できなくなり、USCPA試験の性質上、非常に損をすることになります。では、捨てる分野を作るとどの程度損するのか、具体的に見ていきましょう。僕が見た合格体験記では、FARの政府会計や非営利組織会計、つまり公会計を捨てたというコメントがいくつかありました。では、この分野を捨てた場合はどうなるのでしょうか。
公会計を捨てた場合
公会計の出題割合は20%と言われています。そして、FARの最初のテストレットの選択問題は33問で構成されています。これを単純に計算すると、以下のようになります。
33問×20%=6.6問
計算上は最初のテストレットの時点で約7問の「基礎的だが捨てたので全く分からない」公会計の問題にぶち当たることになります。選択問題は全て4択と仮定して、25%で正解するとします。それを考慮すると、7問中1~2問は正解出来ることになります。これを逆から見ると、公会計の分野の内、5~6問は不正解ということになります。更に、勉強した分野の問題を全て正解できるとは限らないので、テストレット単位の正答率はさらに下がると考えられます。
USCPA試験の採点はどのように行われているかはわかりませんが、テストレット終了時に次のテストレットの難易度が決定しているため、機械的に採点されていると仮定しましょう。その場合、少なくとも5~6問の不正解を含んだテストレットが「高い正答率である」と判断されるでしょうか。このように見ると「捨てる分野」をつくることが、USCPAの試験上どれほど危険かわかると思います。配点に関してはわからないことが多いですが、USCPAの合格スコアである75を目指す場合、単純に計算して、仮に20%の出題割合を持つ公会計を捨てるということは、残り80%の分野で正答率95%を達成する必要があります。そんな苦労をするのであれば、捨てる分野をなくして、全体的にしっかりと回答できるようにしておいた方が合格に近づきます。
最後に
USCPA試験のルール上、どのような問題が本番の試験で出題されたのかは詳細に書くことは許されませんが、ひとつの方向性として「基礎が非常に重要で、幅広い範囲からの出題となる」ということを覚えておいてください。何かの分野を捨てようと思う人は、少なくとも基礎的な問題は解けるようにはしておいた方が合理的です。「一定の分野については基礎の問題も解けません」という状態はやめておきましょう。