USCPA(米国公認会計士)の受験について、今回は出願する州の選び方についてになります。アメリカは日本と異なり連邦制をとっており、各州における権限が非常に強力になっています。日本の都道府県はそこまでの権限はないためイメージがつきにくいかもしれません。そのため、USCPAの志望者は「アメリカ合衆国」という国家に資格試験を応募するわけではなく「アメリカ合衆国の〇〇州」に応募することになります。アメリカのどの州を受験するかは自由に選択可能ですが、出願する州の選び方についてはある程度の効率性を求める必要があり、USCPAを目指す人は、自分の現状、そして将来目指す姿に応じて出願する州を選ぶことが大切になります。

出願州の選び方、その前に

USCPA受験の際にどの州にすればよいのかを考える前に、USCPA試験とライセンス登録の仕組みについて簡単におさらいしたいと思います。冒頭でも書いた通り、USCPAはアメリカの各州に応募して受験する仕組みとなっているのですが、ここで登場するのが「受験要件」という壁です。

受験要件とは?

アメリカの各州が設定している「こういう人物ならウチの州でUSCPA受験してよいよ」という要件のこと。受験要件には大きく分けて以下の2つがある。

  • 学歴要件:君の最終学歴はなんですか?
  • 単位要件:君はどのくらい「会計」と「ビジネス」の単位持ってるの?

つまり、大学卒業や、ある程度の会計とビジネスの単位を持っていないと、USCPAを受験すらさせてくれません。僕がUSCPA受験生だったころは「メイン州」という、学位を持っていれば(つまり4年制の大学を卒業していれば)全ての要件を満たすことが出来た、非商学系学部卒業の人にとっては救世主のような州があったのですが、現在ではメイン州の学歴要件も会計の単位が必要になる等、厳格化されてしまいました。今では、会計やビジネスの単位がない人は問答無用で追加で単位を取得する必要があります。

では、受験要件が簡単な州に応募すればよいじゃないか!という考えがあるのですが、ここで登場するのが「ライセンス要件」という新しい壁です。

ライセンス要件とは

アメリカの各州が設定している「こういう人ならウチの州に「USCPA」として登録してよいよ」という要件のこと。ライセンス要件には大きく分けて以下の2つがある。

  • 実務要件:君、十分な実務経験積んでるよね?監査やったことある?
  • 単位要件:君はどのくらい「会計」と「ビジネス」の単位持ってるの?

ライセンス登録に必要な要件は基本的には実務要件と単位要件ですが、州によっては日本人では経験を積むことが非常に困難な「監査の実務経験」が求められていたり、アメリカでの居住実績が求められていたりします。

このように、アメリカの各州は「USCPAの受験に必要な要件」と「USCPAとしてライセンス登録するのに必要な要件」の2つを設定しているのです。このことから、USCPAを目指す人には、最終的なステータスが大きく分けると以下の2段階あることを理解する必要があります。

  • USCPA全科目合格者
  • USCPAライセンス登録者

USCPA全科目合格者は、USCPAのすべての科目に合格した人のことを指します。この時点で履歴書に「USCPA試験合格」と記載することが可能なため、転職のときに自分のスキルを証明するにはこの時点で十分だと言えます。ただ、この時点では自分の名刺に「USCPA」と記載することはできません。合格しているけど会計士として登録していない状態のためです。そこで、名刺に「USCPA」と記載したい人は、上記のように自分が選ぶ州にライセンス登録する必要があります。

出願州を選ぶポイント

USCPAを目指すには、アメリカの各州による受験要件とライセンス要件があることを書いてきました。ここで、出願州を選ぶポイントが以下の要素で決定することがわかります。

  1. 自分の現在の学歴状況
  2. 将来的にどこまでのステータスを目指すか

それぞれについて説明します。

1. 自分の現在の学歴状況

現在の学歴状況とは、自分の最終学歴、つまり4年制の大学卒業か、短大卒か、大学中退かといったことと、大学在籍中にどの程度の量、会計の単位とビジネスの単位を取得したかといったことを指します。4年制の大学を卒業しており、しかも会計単位もビジネス単位もたっぷり取得しています!という人は好きな州へ応募すればよいのですが(どこの州を選んでも試験の難易度は同じ)、4年制の大学を在学中である、短大卒である、会計やビジネス系の単位を取得していないといった人は、以下の州を選ぶ必要があります。

4年制大学卒業だけど会計・ビジネス単位がほぼ無い方

受験要件が大学卒業の学位と、極力会計とビジネス単位を要求してこない州がおすすめです。現状では、アラスカ州の受験要件が学位と会計単位が15単位が要件となっており、比較的容易に受験することが可能です。

4年制大学を卒業していない(中退、短大卒、高卒)の方

受験要件に学位が入っていない州がおすすめです。現状ではモンタナ州の受験要件が「高等会計に該当する会計単位を24単位」となっており、大学に行っておらず単位そのものをあまり持っていない人でも挑戦しやすい州になっています。

4年制大学在学中の方

受験要件に「卒業を見込み」であれば受験可能な州がおすすめです。現状ではアラスカ州やグアム州が、卒業見込みの状態でも一定の条件を満たせば出願可能となっているので、在学中に挑戦したい人は選択肢に入ると思います。

ここまでは、とにかくUSCPAを受験したい人が最速で受験するためにはどこの州にすればよいのかを書いてきました。次からは、出願州の選び方の2つ目のポイントである「将来的にどこまでのステータスを目指すか」について書いていきます。

2. 将来的にどこまでのステータスを目指すか

将来的にどこまでのステータスを目指すかということですが、繰り返しになりますがUSCPAには合格後に以下の2つの段階があることを説明しました。

  1. USCPA全科目合格者
  2. USCPAライセンス登録者

つまり、ポイント1点目の自分の現在の学歴状況だけで判断して受験州を選んだ場合は、USCPAの全科合格者にはなれますが、その後にライセンス登録しようとすると受験時に選んだ週にライセンス登録しようとすると、ライセンスの要件が厳しくて登録できないという事態が発生します。そのため、USCPA受験当初から「絶対にライセンス登録までするんだ」という人は、「基本的には」その州のライセンス要件に自分の実務経験と単位要件がマッチするかを考慮して、受験する州を選ぶ必要があります。その際、以下のポイントに気を付けて選びましょう。

実務要件に「監査」が無いこと

「監査」が要件にあると日本人はつみます。日本において監査を提供している監査法人は、基本的に日本の公認会計士を取得した人が集まる企業であり、それ以外の人が入るのは割と難易度が高くなっています。そのため、実務要件に「監査」が入っている州を選択すると、USCPAのライセンス登録はしたいけど、監査の実務経験が積めないから一生登録できないということになってしまいます。そのため、実務要件に「監査」が入っていない州を選びましょう。現状では、ワシントン州やグアム州が監査以外の実務経験も認めています。

要件に無理難題が無いこと

え?どういうこと?と思われるかもしれませんが、例えばニューヨーク州のライセンス要件には「米国の居住」や「USCPAホルダーの直下での実務経験」などがあります。また、受験要件は易しいアラスカ州のライセンス要件は「USCPAである直属の上司の下での実務経験かつ実務証明は直属の上司が行う」といったものが含まれます。こういった州を選択した場合、ライセンス登録はほぼ無理ゲーになってしまうので、ライセンス登録したい人は避けて通る必要があります。

え?じゃあライセンス登録したい人はワシントン州やグアム州の受験要件を満たすまでUSCPA受験できないの?と思われるかもしれませんが、そこにはしっかりとした道が用意されています。この道もいつ閉ざされてしまうかわかりませんが。それが、「合格実績の移転(トランスファー)です。つまり、受験要件が易しい州で受験して全科目合格したあとに、その合格実績を別の州にトランスファーして、そのトランスファー先の州のライセンス要件を満たしてライセンス登録するという方法です。ちなみにこの方法を認めている州はワシントン州になります。僕もこの方法を利用してワシントン州でライセンス登録しました。以下では、その方法について詳しく書いていきます。

ライセンス登録までのおすすめステップ

USCPAのライセンス登録がしたいという人のためのおすすめの流れとしては以下のようになります。

  1. 学歴要件が簡単な州に必要な単位を取得
  2. その州に対して出願
  3. 受験を通して全科目に合格
  4. ライセンス登録を行いたいかを考慮
  5. ライセンスが不要な場合は終了(以下、必要な場合)
  6. 実務経験要件が簡単な州の学歴要件を追加で満たす
  7. 学歴要件・実務要件を満たした時点で合格実績をトランスファー
  8. トランスファー先の州でライセンス取得

個人的には、全科目合格したのであれば、是非ライセンス登録までしてほしいと思います。僕も当時の学歴要件が簡単だったメイン州で全科目合格した後に、ワシントン州に必要な単位を追加で取得し、ワシントン州にトランスファーして無事にライセンスを取得することが出来ました。やはり名刺にUSCPAと記載するということは、信頼もされる上にそこから話を広げやすいので、ある程度の効果は期待することができます。

以上で、出願州の選択についてを終わりたいと思います。繰り返しになりますが、学歴要件や実務要件は簡単に変更されますので、最新情報は専門学校で確認するようにしてください。