USCPAは働きながら全科目合格を目指せる資格です。ただ、誰でも簡単に合格できる資格なのかといわれるとそうではなく、むしろしっかりと覚悟を持って挑み、合格まで相当な労力が必要となる資格となっています。だからでしょうか。勉強期間中に「仕事を辞めて勉強に専念すれば、もう少し早く合格できるのではないか」と考える人もいるようです。監査法人で働いていると、多くのUSCPA合格者や勉強中の人と話す機会があります。僕はそういう時に気軽に経験談などを聞いてしまうのですが、前職を辞めて勉強に専念してUSCPAを取得した後に転職してきた人もいますし、USCPAを勉強中である後輩から「仕事辞めて勉強に専念したほうが良いでしょうか」と相談を受けたことがあります。そこで今回は、仕事を辞めてUSCPAの勉強に専念することについて書いていきます。

USCPA勉強への専念について

タイトルにも書いていますが、僕はUSCPAの勉強に専念するために仕事を辞める必要は無いと思っています。むしろ、絶対辞めないで働きながら目指したほうが良いと考えています。理由は大きく分けて3点あり、「1.生産性があがる」「2.合格時点の市場状況が読めない」そして「3.心への負担が大きい」ということがあげられます。今回のテーマは、仕事を辞めようか悩んでいる人には大きな影響のある話だと思いますので、1つずつ詳細に書いていきます。

生産性があがる

1つ目の理由は、仕事とUSCPAの勉強を両立することにより、生産性があげられるからです。「え?長時間働けないんだから、生産性は下がるんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれません。残念ながらその発想は間違いです。「最小のインプットで最大のアウトプットを」これが生産性の正体です。詳細については、以下の著書で書かれており、かつ内容もかなり簡単にわかりやすくしてくれているので、まだ読んでない方は考え方がガラッと変わるので一読することをお勧めします。

では、仕事をしながらUSCPAの勉強をすることにより、どのように生産性があがるのでしょうか。それは、合格するまでは必ず定時に帰ると決め、実行することから始まります。そのうえで、これまで残業していた仕事を定時までに完了するように工夫していくのです。「定時に出社して定時に退社するなんて、周囲に迷惑がかかる」と思っている人は、まず根底の考え方を修正する必要があります。「定時に出社して定時に退社する」のが当たり前です。それ以上の仕事を抱えているのであれば、工夫して定時内に終わるようにしましょう。周囲の目線が気になるのであれば「定時で帰るけどきっちり仕事で成果を出している」と認識されれば良いのです。すぐには難しいかもしれませんが、USCPAに全科目合格するまでは、仕事の時間を最小限まで減らし、その限られた時間で最大の効果を発揮出来るようにしましょう。結果として、自身の生産性がアップしていることに気が付くはずです。ちなみに定時までに仕事が終わっていない人の仕事を手伝う必要はありません。あなたの人生はあなたのものです。全力で目標を追いかけているときに他人の手助けをしている暇はありません。

僕も、USCPAの勉強をしていた時は、決算期の超繁忙期を除いて、必ず定時で帰っていました。会社の寮に住んでいたので、定時に帰宅準備をし、事務所を出て社員食堂で晩御飯を済ませから帰宅し、寮の一番風呂に入り、19時前には自室での勉強の準備が整っていました。そこから夜の23~24時くらいまで勉強し、次の日は朝6時に起床、そして会社が始まる9時前まで勉強し、また定時まで働くというサイクルを毎日のように繰り返していました。極限までどうすれば勉強時間を捻出できるかいつも考えていました。今思うと、あの時期が社会人として最も効率的に働く方法を追求していたような気がします。

USCPAの勉強と仕事を両立することにより、時間効率を極限まで自分の頭で考え、試行錯誤することにより、自ずと生産性は高まります。これが、USCPAは働きながら目指すべき理由の1つ目となります。

合格時の労働市場は読めない

2つ目の理由に入る前に、突然ですが質問です。仮に、今が2019年だとします。あなたは2020年がコロナでぐしゃぐしゃになると予想できたでしょうか?緊急事態宣言が出されることは?レジ袋が有料化することは?すべて予想ができていた人、いませんよね。では、現時点から1年後の日経平均株価はどうでしょうか。1年後に流行っているサービスは?そう、未来のことは誰にもわからないのです。例えば、もし会社を辞めて勉強に専念して、1年以内に全科目合格したとしましょう。そのとき、辞めた会社より待遇が良い、もしくは自分が入りたいと思う会社に入れるかは完全に未知の世界なのです。

具体例として、監査法人の話をします。2020年前後の話になりますが、コロナが拡大する前までは景気が良く、USCPAを勉強中の人でも監査法人に転職することができていました。僕もよくTwitterで「採用の幅が広がっているので、勉強中でもとりあえず採用面接に挑戦してみるのもあり」とつぶやいていました。しかしながら、コロナが拡大した後ではUSCPA勉強中の人の採用は0、合格者でも書類を通す人は限りなく少なくなったと聞いています。つまり、極端な話をすると以下のようになります。

  • 2019年に合格⇒チャンス大
  • 2020年に合格⇒採用は割と絶望的

もちろんこれが絶対とは言えないですが、残念ながら事実です。個人の力量が高かったとしても、景気の流れには抗えないのです。もちろん「監査法人とか全然興味ないんだけど」という人も多いと思いますが、これは監査法人に限ったわけではなく、社会全体として採用が景気状況に左右されるのはどうしようもありません。僕も大学卒業時、リーマンショックの影響により新卒採用で「今年は採用を取りやめます」という企業をいくつも見てきました。

つまり、会社を辞めて勉強に専念したとしても、合格した時の景気状況によっては思い通りの労働市場に入り込めない可能性があります。場合によっては、前職よりも悪い待遇での採用になる可能性があります。それではせっかくの資格がもったいないので、仕事は継続しながら勉強して合格を狙うようにしましょう。それにより、職を失わずに、つまり最低限現状は維持したまま次のステップへの挑戦が可能になります。合格時の市場状況がよめない、これが理由の2つ目になります。

心への負担が大きい

3つ目の理由は、勉強への専念は心への負担が大きいことです。資格試験は、言ってしまえば孤独との闘いになります。予備校に通っていたとしても、そこで仲の良い人と一緒に勉強をするとしても、最終的に自分の実力を引き上げるのは自分自身です。勉強経験者はわかると思いますが、これが結構、心にきます。他人がアホみたいに遊び散らかしている中、最終的に合格できるか不安な中、自分の時間とお金を勉強に投入し続けるのは並大抵のことではありません。さらに、どれだけ勉強してもわからない分野が出てきます。苦手な分野が出てきます。まだ未知の分野がどれほどあるか、計り知れません。問題集は何度解いても同じ箇所で間違ったりします。前回は正解していたのに、次に解いたときに間違えているときもあります。自分のアホさ加減に腹が立ち、壁に文房具を放り投げたり、分厚い問題集を枕にたたきつけるかもしれません(僕の話です)。資格試験は、本気でやればやるほど、心へ負担がかかるものなのです。

そんなとき、仕事を辞めて自分の収入が全く入らない状態にすると、どうなるでしょうか。あきらかに心への負担が増えるのが簡単に想像できます。人間は生きていくうえで必ず支出が発生します。仕事を辞めて収入が途絶えている中、自分の預金残高が減り続けていくのに、まともな精神状態を保てるでしょうか。ましてや、資格試験を勉強中の人は普通の人に比べて心への負担は大きいのです。そこに「絶対になんとかしないと、すっからかんになる」というプレッシャーまで加えてしまうとどうなるでしょうか。適度なプレッシャーは成果をあげるには効果的ですが、過度なプレッシャー下において、人間は本来の力を発揮できません。わざわざその状況に自分を追い込む必要はありません。

まとめ

今回は、USCPAは働きながら全科目合格を目指すべきという話を書いてきました。最後にまとめますと、理由としては3点あります。

  1. 生産性が上がる
  2. 将来のことはわからない
  3. 心への負担が大きい

もちろん他の要素もありますが、個人的に重要と思う3点を挙げさせてもらいました。特に、ポジティブな要素である「生産性が上がる」点については最重要だと思っており、仕事とUSCPAの勉強を両立することで、少ない時間投入で最大の結果を出そうとすること、そして極限まで時間を効率よく使おうとすることになり、USCPAに全科目合格するころには社会人としてランクアップしていることだと思います。もちろん両立は厳しいですが、頑張ってください。