USCPAの勉強。有価証券について。
Marketable Security(有価証券)
今回は、Marketable Security(有価証券)について見ていきます。Marketable Securityとは、債券や株式などのことであり、企業がそれらを購入(つまり投資)したときに発生する勘定科目になります。
企業が効果的な経営を行い、次々と儲けを積み上げていくと、多くの現金を保有することになります。通常、経営者は現金を現金のままで置いておくことはせず、何らかの安全性が高い金融商品や定期預金などで少しでもリターンを追求します。
例えば、僕がこれまで在籍していた会社は全てキャッシュリッチな会社だったのですが、毎月積みあがる現金はコマーシャルペーパーや定期預金などで運用していました。満期は3ヶ月未満のものが大半でしたので、スズメの涙程度でしたが、少しは利息収入を得ていました。
では、Marketable SecurityのUSCPAの論点について見ていきたいと思います。今回のコンテンツは以下のようになっています。一貫して持っていただきたい視点は「投資する側の論点である」ということです。
- Marketable Securityの種類
- Marketable Securityのカテゴリー
- Marketable Securityの会計処理
- Marketable Securityの仕訳
この順番で見ていきます。それでは見ていきましょう。
Marketable Securityの種類
まずはMarketable Securityの証券としての種類から見ていきます。Marketable Securityは種類で分けると「Debt Security(債務証券)」と「Equity Security(持分証券)」に分けることが出来ます。それぞれについて説明します。
Debt Security
Debt Securityは、主に債券への投資を指します。債券とは、お金を調達したい会社などが「○月○日に○円返す。金利は○%つける」というものを発行し、それを投資家が購入することにより、その債券を発行した会社にお金が入るものになります。債券はその会社が発行するものであり、それを購入する側から見ればDebt Securityとなります。具体的な例としてはBond(社債)やMunicipal Bond(地方債)などがあげられます。
Debt Securityの最大の特徴は「満期があること」です。ほとんどの場合、満期になると、投資したお金と金利が戻ってくることになります。余談ですが、僕は「有価証券と言えば株式」という考えが頭にしみついていたので、USCPAの試験では債券に投資したという文章を良く株式への投資と勘違いして苦労しました。
Equity Security
Equity Securityは、主に株式への投資を指します。株式とは会社が発行する会社の所有権のことです。株式への投資は、所有する割合によって会計処理が大きく異なってきますが、今回は20%未満の所有(かつ重大な影響力を持たないこと)を前提としています。株式の特徴は、Debt Securityとは違って「満期がない」ことです。具体的な例としては、Common Stock(普通株式)やPreferred Stock(優先株式)などがあげられます。
Marketable Securityの種類としてDebt SecurityとEquity Securityがあるとわかったところで、次にMarketable Securityのカテゴリーについて見ていきます。
Marketable Securityのカテゴリー
Marketable Securityは、どのような目的で保有したのかによってカテゴリー分けする必要があります。そして、そのカテゴリーによって会計処理も異なります。その目的とは以下の3つになります。
- 満期まで保有する
- すぐに売買する
- どちらでもない
それぞれについてもう少し具体的に説明します。
1.Hold to maturity Security(満期保有目的債券)
こちらは、満期まで保有するという目的の投資になります。こちらのカテゴリーに分類するためには、投資する主体がそのDebt Securityを満期まで保有する「意思」と「能力」を必要とします。こちらのカテゴリーはEquity Securityが分類されることはありません。理由は、Equity Security、つまり株式には満期が存在しないため、満期まで保有ということがありえないからです。
2.Trading Security(売買目的有価証券)
こちらは、すぐに売買する目的の投資になります。一般的には、1年以内にまた売ったり買ったりする場合、こちらに該当することになります。個人的にですが、この科目を大量に計上している会社は「本業以外に投資する先がないのではないか」と思ってしまいます(有価証券の売買が本業である金融機関を除く)。
3.Available for sale Security(その他有価証券)
こちらは、1と2に当てはまらない場合のカテゴリーになります。簿記では「その他有価証券」とカテゴリーされますが、英語で表記するとAvailable for sale Securityですね。直訳すると売買可能証券です。Securityを特にすぐに売るつもりもなく、満期まで待つ意志もなければ、こちらのカテゴリーに該当します。
日本の古い企業を見ると、その他有価証券(つまりAvailable for sale Security)をやたらと持っている企業が存在します。これは「株式の持ち合い」というお互いの株式を保有しあうことによって、株価の安定を図り、ずぶずぶな関係によりスムーズな取引を行うという資本主義社会とは思えない慣習によるものになります。
Marketable Securityの3つのカテゴリーについて見てきました。次は、それぞれのカテゴリーに対するMarketable Securityの会計処理についてみていきます。
Marketable Securityの会計処理
上記3つのカテゴリーについて、期末日時点での会計処理が異なってきます。それぞれについて説明します。
1.Hold to maturity Security
こちらは、期末日においてAmortized cost(償却原価)にて報告されることになります。つまり、Fair value(公正価値)にしない点に特徴があります。このことから、期末日にそのDebt Securityの時価がいくらであっても、Unrealized gain(未実現利益)もUnrealized loss(未実現損失)も計上することはありません。つまり、Hold to maturity Securityにカテゴリー分けされた証券(ここでは債券)の価格変動はP/LにもB/Sにも影響を与えません。満期まで保有するので、債券の値動きは関係ないからです。 他のカテゴリーと比較するとわかりやすいと思います。
2.Trading Security
こちらは、期末日においてFair value(公正価値)にて報告されることになります。期末日におけるBook value(簿価)と期末日のFair valueの差額は、Unrealized gainまたはUnrealized lossとして、Income statement(損益計算書)に計上することになります。つまり、まだ実際には売却していないのにも関わらず、証券の価格変動が今期のP/Lに影響を与えるのです。
その理由として、どうせすぐに売買されるだろうという前提が存在するためです。すぐに売買するものが益(または損)を抱えているのに、今期にそれを報告しないということはありえないということから、時価の変動を期末日時点で開示することになります。
3.Available for sale Security
こちらは、期末日においてFair value(公正価値)にて報告されることになります。期末日におけるBook valueと期末日のFair valueの差額は、Unrealized gainまたはUnrealized lossとして計上されることになります。
この部分だけ見るとTrading Securityと一緒に見えますが、どこに計上するのかという点に差異があります。計上する箇所はIncome statementではなく、Balance Sheet 、つまりB/S、貸借対照表となります。Stock holders’ equityの部の、Other comprehensive incomeの箇所に影響を与えます。Statement of comprehensive income(包括利益計算書)にも計上されますが、とにかく直接該当期のP/LのNet Income(純利益)に影響を与えないという点が重要になります。
こちらは、Trading Securityのように、すぐ売買するわけではないのでP/Lに影響を与えない、かといってHold to maturity Securityのように満期まで持つこともないので、何も影響を与えないBook valueはおかしい、ということで、中間的なOther comprehensive incomeとしてB/Sに差額が計上されることになります。
これで、それぞれのカテゴリーのMarketable Securityの会計処理についてを終わります。最後に、Marketable Securityの仕訳について見ていきます。
Marketable Securityの仕訳
それでは、これら3つのカテゴリーにおいて、どのように仕訳をきれば良いのかということを見ていきます。
1.Hold to maturity Security
こちらは上記でも説明したとおり、期末日時点でAmortized costで計上するので、特に何かの仕訳を切るということはありません。しかし、試験ではたまにPermanent impairmentというものを仕込んでくることがあります。仮にHold to maturity Securityの投資を行っている場合でも、Permanent impairmentがある場合はRealized lossとしてP/Lに計上しなければなりません。
Permanent impairmentとは、簡単にいうと「この債券は大幅に値下がりしてもうダメだ。これ以上価値が上がることは考えられない。」という状態です。この状態ではもうダメということがわかっているので、Unrealized lossではなくRealized lossとなります。仕訳としては以下のようになります。
例)100,000ドル投資したA社の社債価格が80%下落した。この下落はPermanent impairmentと認められる。
Dr Realized loss 80,000
Cr Investment 80,000
勘定科目名は状況によって変化しますので、柔軟に対応する必要があります。試験では色んな言い回しをしてくるかもしれませんが、Permanent impairmentの場合はP/Lに影響を与えると覚えていれば大丈夫です。これは他の2つのカテゴリーにも当てはまります。
2.Trading Security
こちらを簡単にまとめると「期末日に時価評価を行い、差額はP/Lに計上」になります。特徴としては、ひとつひとつの投資に対して時価評価を行うことがあげられます。具体的に見ていきます。まず、以下の3つの投資を行っていて、全てTrading Securityのカテゴリーにしているとします。
2013年12月31日(期末日)
投資A:購入時4,000ドル、期末日時価6,000ドル
投資B:購入時8,000ドル、期末日時価3,000ドル
投資C:購入時2,000ドル、期末日時価7,000ドル
これら3つの投資に関して期末日の時価評価に関する仕訳を切ります。
2013年12月31日(期末日)
投資A
Dr Investment A 2,000
Cr Unrealized gain 2,000
投資B
Dr Unrealized loss 5,000
Cr Investment B 5,000
投資C
Dr Investment C 5,000
Cr Unrealized gain 5,000
これらのGainとLossは、今期のP/Lに影響をあたえることになります。これらの仕訳を通して、Marketable SecurityをFair valueにします。そのため、もし次の年に売却した場合は、この期末日のFair valueで仕訳を切ることになります。売却時の仕訳としては以下のようになります。
2014年に、上記のうち、投資Cを3,000ドルで売却した。
Dr Cash 4,000
Dr Realized loss 3,000
Cr Investment C 7,000
前期末に7,000ドルで時価評価していたので、売却するときには7,000ドルで売却し、手に入れた4,000ドルとの差額3,000ドルがRealized lossとなっています。ちなみにですが、時価とFair value(公正価値)はほぼ同じと考えても大丈夫です。
3.Available for sale Security
こちらを簡単にまとめると「期末日に時価評価を行い、差額はB/Sに計上」となります。Trading Securityとは違って、全ての投資をまとめて評価することになります。Trading Securityとの違いを明確にするため、先ほどと同じ金額の投資をAvailable for sale Securityのパターンで見ていきます。
2013年12月31日(期末日)
投資A:購入時4,000ドル、期末日時価6,000ドル
投資B:購入時8,000ドル、期末日時価3,000ドル
投資C:購入時2,000ドル、期末日時価7,000ドル
これらを全て合算すると、購入時の合計は14,000ドル、期末日時点の時価は16,000ドルとなります。つまり、2,000ドル値上がりしているわけです。期末日時点の仕訳は以下のようになります。
Dr Market Adjustment 2,000
Cr Other comprehensive income 2,000
こちらのMarket Adjustmentという科目を利用して、B/S上で資産の増加を表現します。それに対するOther comprehensive incomeが、B/Sの純資産の部に計上されることになります。では、このさらに1年後に、以下のような状態になったと仮定すればどうなるでしょうか。
2014年12月31日(期末日)
投資A:購入時4,000ドル、期末日時価4,000ドル
投資B:購入時8,000ドル、期末日時価5,000ドル
投資C:購入時2,000ドル、期末日時価3,000ドル
購入時の合計は14,000ドル、そして2014年度における期末日の評価は12,000ドルだとします。2013年度末の16,000ドルから急激に下がっています。ここで注意するべき点は、2013年度末では16,000ドルだったということです。そこから12,000ドルまで減少したので、以下のような仕訳になります。
Dr Other comprehensive income 4,000
Cr Market Adjustment 4,000
16,000ドルから12,000ドルまで下げるため、4,000ドルで仕訳を切ることになります。購入時の14,000からの差額である2,000ドルというわけではありません。B/S上では、Market AdjustmentとOther comprehensive incomeが両方マイナス2,000で表示されることになります。
Available for sale Securityで注意すべき点は、Permanent impairmentになります。基本的にAvailable for sale Securityの問題でよく問われるのは、P/Lへの影響はいくらでしょうか、というものであり、これはB/Sにしか影響を与えないので”0”が答えのことが多いのですが、たまに内容にPermanent impairmentを盛り込んできて、実はその金額だけP/Lに影響するという答えのときがたまにありました。受験者時代の僕のようにAvailable for sale Security→P/L影響額→ゼロという思考回路を持っている人は、Permanent impairmentに気を付けてください。
以上で、Marketable Securityについてを終わりたいと思います。