USCPAの勉強。棚卸資産の論点について。長文です。
Inventory(棚卸資産)
今回は、Inventory(棚卸資産)について見ていきたいと思います。Inventoryとは企業が所有する商品の在庫のことです。つまり、販売目的で仕入れた商品や、自社で製造した製品のうち、まだ売れていないもののことを言います。自動車のメーカーであれば完成した自動車、ビール会社ならビールがInventoryにあたります。
Inventoryの論点として、期末日時点でどの程度の在庫があるのかという点があげられます。期末在庫は利益にも直結するので、このあたりは非常に重要な分野になります。Inventoryの金額は以下の2点で決まります。
- Inventoryの数量
- Inventoryの単価
数量に単価を掛けると、全体の在庫金額を導くことができますね。そのため、この2点を導くために様々な方法が用意されています。USCPAではInventoryの問題が幅広く出題されますが、結局のところ上記の2点を問う問題がほとんどで、重箱の隅をつつくような問題はほとんど出題されないので、しっかりと全体を理解していれば大丈夫です。では、さっそく具体的な内容に入っていきます。
Inventoryの範囲
USCPA試験では、商品について、ビジネスプロセスの中で、いつまで自社のInventoryとして取り扱うのか(つまり範囲)が問われます。ビジネスの中で、商品が売れて取引先に発送するという流れがありますが、その商品はいつまで自社のInventoryとして取り扱うのでしょう。相手の手元に届いたときでしょうか。トラックや船に商品を積んだときでしょうか。また、商品の販売を販売会社に委託している場合はどうなるのでしょうか。
これらの疑問を解決するために「F.O.B」というルールがあります。「F.O.B Destination」と「F.O.B Shipping point」という2種類があるのですが、最初にF.O.Bとはどのようなものなのかについて簡単に説明していきます。
F.O.Bについて
F.O.Bとは「Free on board」の頭文字になります。このF.O.Bの後ろにDestinationかShipping pointが来るかで扱いが変わるのですが、ここで覚えておきたいポイントは「F.O.Bの後に来る方が、料金も責任も負わない」ということです。例えば、F.O.B Destinationの場合は到着地点の側が到着するまで責任も料金も負わない、そしてF.O.B Shipping pointの場合は発送側が発送した時点で責任も料金も負わないということです。では、詳しく見ていきます。
1.商品をVendorから購入している場合
こちらが買い手側の話になります。つまり、こちら側がDestination(到着地点)となります。ここで、F.O.Bの条件がDestinationかShipping pointでInventoryの取り扱いが変化するパターンを見ていきます。
1.F.O.B Destinationで発送中の商品の場合
F.O.B Destinationなので、Destination側が責任も料金も負っていません。つまりこちら側に責任が無いため、こちらの手元に到着するまではInventoryとして計上しません。
2.F.O.B Shipping pointで発送中の商品の場合
F.O.B Shipping pointのなので、発送した側はすでに責任も料金も負っていません。つまりこちらに責任があるため、こちらの手元に届いていなくても(発送中でも)この商品はInventoryとして計上します。
2.商品をCustomerに売った場合
こちらが売り手側の話になります。つまり、こちら側がShipping point(発送地点)となります。こちらも、条件がF.O.B DestinationかShipping pointかの違いを見ていきます。
1.F.O.B Destinationで発送中の商品の場合
F.O.B Destinationなので、Destination側が責任も料金も負っていません。到着地点に着くまでは先方側に責任が無いため(こちら側に責任がある)あちら側に到着するまでは、その発送中の商品はInventoryとして計上しておく必要があります。
2.F.O.B Shipping pointで発送中の商品の場合
F.O.B Shipping pointのなので、発送した側はすでに責任も料金も負っていません。つまりこちらにはもう責任がないため、先方の手元に届いていなくても(発送中でも)、この商品はInventoryの範囲からは外れることになります。
つまり、Inventoryの範囲を求める問題が出たときに注目するポイントは以下の2点となります。
- F.O.Bのあとに来る側が責任も料金も負うことはない
- 自分が購入側か発送側か
次に、委託販売の時(Goods on consignment)の論点を見ていきます。
Goods on Consignment
こちらもInventoryの範囲の論点ですが、商品の販売を委託または受託する時の話となります。例えば、高級ブランドのメーカーが、百貨店に販売を委託するイメージですね。委託する側(高級メーカー)のことをConsignor、受託する側(百貨店)をConsigneeと言います。USCPA試験で重要となるのは、自分がConsignorなのかConsigneeなのかという点、そしてその商品を委託しているのか、受託しているのかという点になります。
Goods out on consignmentという単語があった場合、それは受託者に商品の販売を委託しているだけ(つまり自分が委託している立場)なので、自社のInventoryとして含める必要があります。逆に、Goods held on consignmentという単語があった場合は、自分が商品の販売を受託している商品なので、その商品をInventoryに含めてはいけません。
USCPA試験での出題パターン例
実際の試験では、様々な状況下にあるInventoryの説明がずらずらと並んだ後に「さて、年度末のこの会社のInventoryの金額は合計いくらでしょう」と問われるものがあります。そのずらずら並んだInventoryの中に、F.O.B DestinationやShipping pointの条件で発送中や注文中のもの、Out on consignmentのものやHeld on consignmentのものが混在しているのです。Inventoryにそれらを含める、含めないを判断していき、最終的なInventoryの合計金額を求めることになります。
ここまでがInventoryの範囲になります。次はInventoryに含まれる範囲について見ていきます。
Inventoryに含める範囲
Inventoryには他社から購入して仕入れるInventoryと、自社で製造するInventoryの2種類があります。ここでは、Inventoryの金額は何まで含めるのかということについてみていきます。
仕入れるInventory
Inventoryを仕入れる場合、購入した商品の価格だけでなく、仕入れたときの発送にかかった運賃や、在庫として置いておく費用、商品にかけられた保険料などすべてを含む必要があります。つまり、取得までにかかった費用を全て含めてInventoryの金額とします。
注意点は、「仕入れるまで」にかかった費用を全て含めるだけであり、実際に商品として販売するときにかかる費用はInventoryに含めないという点があります。まぎらわしいものとしてはFreight-inという費用は仕入れ時のものなのでInventoryに含めますが、Freight-outという費用は販売するときの発送費なので、Inventoryには含めずSelling expense(販売費)という別の科目となります。
製造したInventory
こちらはFARではなくBECの分野になるので、簡単に説明します。製造したInventoryには、Direct material(直接材料費)、Direct labor(直接人件費)、Manufacturing overhead(製造間接費)から構成されます。それらの工程を全て終えたものが、Finished goods(完成品)としてInventoryに計上されることになります。
では、次はInventoryの測定方法について見ていきたいと思います。
Inventoryの測定方法
Inventoryの測定方法ですが、2つ存在しています。
- Perpetual inventory system(継続棚卸法)
- Periodic inventory system(棚卸計算法)
これらはどちらにも長所と短所があるのですが、USCPAの試験で主に問われるのは後者のPeriodic inventory systemになります。現実社会でもほとんどの会社がPeriodic inventory systemを使用していると思います。ですが理解を深めるため、Perpetual inventory systemから見ていく必要があります。
Perpetual inventory system
こちらはあまり出題されません。余談になってしまいますが、僕が留学して会計学を勉強していた時、こちらの方法が初心者用なので先にテキストに出てきました。僕は練習問題などを通して必死こいて勉強してこちらの方法を完璧にしたと思ったら、後から重要なPeriodic inventory systemが出てきて、こちらに対する必死の勉強はあまり意味がなかったという辛い経験があります。
Perpetual inventory systemの特徴は、仕入れる都度「Inventory」として計上を行い、その商品が売れた際にInventoryを取り消してCost of goods sold(売上原価、以下COGS)を計上する方法となります。つまり、常にInventoryのゆくえを追いかけている(継続記録している)方法となるため、Perpetual inventory system(継続記録法)と呼ばれるのです。
こちらの方法のメリットとしては、常にInventoryを追いかけて記録しているので正確な数字がわかるということと、販売した分と未販売の分が明確に判断できるということになります。その反面、仕入と販売が多いと作業が膨大になるというデメリットがあります。では、具体的に仕訳で見ていきます。
・InventoryをCashで100ドル分仕入れた
Dr Inventory 100
Cr Cash 100
・上記のInventoryを全て掛けで150ドルで販売した
Dr Accounts Receivable 150
Dr Cost of goods sold 100
Cr Sales 150
Cr Inventory 100
仕訳を見ていただければわかるのですが、販売した時点でInventoryを減少させて、それに対応するようにCOGSを計上しています。実際の試験でPerpetual inventory systemを問われるときは、Inventoryを購入する際の単価と数量まで詳しく記載されています。
ここまで細かくみれるのであれば、こちらの方法の方が良いのではと思うかもしれませんが、コンビニやスーパーなど一日に何百個にものぼる製品を売っている企業では、ひとつひとつの製品を把握することがほぼ不可能です。出来たとしても膨大な作業を必要とすることになります。そのため、こちらの方法はカスタムオーダーの自動車を販売しているような会社などに向いていることになります。
次に、Periodic inventory system(棚卸計算法)を見ていきます。
2.Periodic inventory system
こちらの方法は、商品を仕入れたときにInventoryを計上せずに、Purchase(仕入)という勘定を使用します。さらに、商品が売れたときもInventoryは使わずに、期末に一括してCOGSを計算することになります。どのように期末のInventoryの金額を測定するのかというと、期末に実地棚卸を行い、期末日時点のInventoryの金額を測定するのです。そして、下記の計算式に当てはめてCOGSを導き出します。
Beginning inventory + Purchase – Ending inventory = COGS
この式は非常に重要です。日本語で記載すると以下のようになります。
期首棚卸資産+仕入ー期末棚卸資産=売上原価
これを具体的に仕訳でみていきます。期首に在庫は全く所有していない状態と仮定します。
・商品を500ドル分現金で仕入れた
Dr Purchase 500
Cr Cash 500
・一部の商品を600ドルの掛けで販売した
Dr Accounts Receivable 600
Cr Sales 600
この状態で期末日を迎えたとします。どの程度の商品が残っているのかを実地棚卸した結果、在庫は200ドル分残っていることが判明したとします。これを計算式に当てはめると以下のようになります。
B:0
P:500
E:△200
C:300
このアルファベットはBeginning、Purchase、Ending、COGSの頭文字となっています。このことから、COGS、つまり売上原価は300ドルということがわかります。そして、Ending inventory の200が次期のBeginning inventoryとなります。このように、毎期末に大雑把にCOGSと期末におけるinventoryの金額を計算するのがPeriodic inventory systemになります。
かなり長くなったので、一旦切ろうと思います。次回はInventoryの評価方法を見ています。