USCPAのお勉強として、今回はFARの「偶発事象」について書いていきます。

偶発事象(Contingency)とは

偶発事象(Contingency)とは、将来に利益または損失が生じる可能性を持つ事象のことを言います。もう少しかみ砕いていうと、現時点で「将来的に何か良いこと、または悪いことが起こる可能性がある」ということを指します。例えば、競合他社に訴えられていて、来年に裁判に負けると数億円くらいの賠償金を支払わないといけないかもしれない、という状況がこれに該当します。USCPAの試験で出てくるのは大体「訴えられてます」というお話が中心です。

会計基準上では、「そんな悪いことが起こるってわかってるのであれば、その年の財務諸表にその状況を反映させましょうよ」ということになるわけです。その年に悪いことをやらかして訴えられているんだったら、損失はその年に計上すべき(費用収益対応の原則)だし、保守的に見ておくべき(保守主義の原則)だろうというわけです。

ところが、「少しでも悪いことがありそうならバンバン財務諸表に乗せちゃいましょう!」と言って損失を計上しまくっていると、実際に裁判の結果を見てみると無罪だったりするわけで、誰もその財務諸表を信頼できなくなってしまいます。そこで、損失を前倒しで認識するかどうかは以下の要素が大きく関わってくることになります。

偶発事象を認識する要素

  • 最終的に有罪となる確率(損失発生の可能性)
  • 判決の結果いくら損失が発生するか(損失額の見積もり)

これらの要素が組み合わさり、財務諸表にどの程度まで偶発事象を記載するかの判断が分かれることになります。

偶発事象の認識と開示

まず1つ目の要素である「損失発生の可能性」について説明します。USCPA試験では、損失が発生する可能性について、3つの状態に分類しています。

発生可能性定義
Probable(大)future events are likely to occur
起こりそうだ
Reasonably possible(中)chance of occurrence is more than remote, but less than likely
起こりそうってわけでもないけど、全然ないとも言えない
Remote(小)chance of occurrence is slight
ほぼ無さそう

実際の試験でどうすればこの分類を当てはめることができるのかというと、定義の中に記載されている文言が、思いっきり試験の文章の中に記載されているので、そこから判断します。ここから、それぞれの発生可能性の中からどのような処理が必要になるかについて書いていきます。ちなみに先に書いておくと、この中で財務諸表に計上する可能性があるのはProbable、つまり発生可能性が高いと思われるときだけです。そのあたりについてもう少し詳しくみていきます。

発生可能性に応じた対応

偶発事象には、上記の表にある通り3種類の発生可能性の分類があります。一番可能性が高い「Probable」、中くらいの可能性である「Reasonably possible」、そしてほとんど可能性がない「Remote」の3種です。USCPAの試験では、これらの3種類の可能性を判別してから、その種類に応じた対応をさらに知っておく必要があります。

Probableの場合

損失発生の可能性が高い、つまりその事象が「likely occur」だった場合、次のステップに移行することになります。次のステップとは、その損失の金額が合理的に見積りできるかどうかを見ていくことなります。

損失の合理的な見積もりが可能な場合P/Lに損失をあらかじめ計上+B/Sに負債を認識
損失の合理的な見積もりが不可能な場合偶発事象の性質と合理的に見積もりできないことを開示

つまり、損失発生の可能性が高く、かつその損失金額について合理的に見積もりが出来る場合に限って、損失を計上することになります。ちなみに、金額の見積もりについて「1000万~1億の間くらい」という結果の場合は、最低金額である1000万を計上することになります。ところが、それよりマシな推定(better estimate)がある場合には、その金額で計上することになります。

Reasonably possibleの場合

損失発生の可能性が中くらい、つまりその事象の発生率が「more than remote, but less than likely」の場合は、損失をあらかじめ計上する必要はありません。しかしながら、注記による開示が必要となります。財務諸表に影響させないけど、こういう事象があるよとステークホルダーには教えておきましょうということですね。

Remoteの場合

損失発生の可能性が小さい、つまりその事象の発生率が「is slight」の場合は、損失のあらかじめの計上も、注記による開示も必要ではありません。負ける可能性がほとんどない、意味不明な訴訟までいちいち財務諸表や注記に記載してステークホルダーを心配させる必要がないということですね。

ここまでが、偶発事象のメインの論点になります。最後に、上記の逆バージョン、つまり将来的に良いことがある可能性についてみて終わりにしたいと思います。

偶発利得(Gain contingency)について

偶発利得とは、現時点で将来的に何か良いことが起こる可能性がある事象のことを言います。上記の例では訴えられているパターンを説明しましたが、この場合は逆に「訴えていて、将来的にお金をぶんどれるかもしれない」パターンとなります。

この場合において、どのような状況であってもその利益を計上することはできません。たとえ「この裁判に勝訴する可能性はProbaleで、合理的に1000万得ることができそうだ」と書かれていたとしても、財務諸表には何も計上しませんし、開示にも何も記入しません。厳密にいうと開示することはできますが、会計原則は保守主義であるため、そんなわざわざ期待させるようなことを書くことはないのが一般的です。

偶発事象関係の問題で、複数の訴訟案件を例示にあげて、「では、今期の財務諸表の金額に影響があるのはいくらでしょう」という問題に、Gain contingencyのパターンをあえて入れてきて攪乱させる場合もありますので、惑わされずに損失のProbableかつ合理的に見積もれる金額のみ合計するようにしてください。

以上で、偶発事象についてを終わりたいと思います。