USCPAの試験範囲について勉強していきます。今回はFARの「現金及び現金同等物」について書いていきます。かなり長文ですが、地味にわかりにくい分野でもあるので細かく書いていきたいと思います。
Cash & Cash Equivalents
今回は、Cash and Cash Equivalents(現金及び現金同等物)についてです。カテゴリーは貸借対照表の資産の部になります。FARの勉強の際は自分が勉強している勘定科目は財務諸表のどの部分に当てはまるかを意識することが重要です。
Cash and Cash Equivalentsで最初にイメージするのはもちろんCash(現金)ですね。USCPAはアメリカの試験なので、基本的に通貨は円ではなくドルとなっています。このCash and Cash Equivalentsの分野で重要となるのは2点です。
- Cashに含まれる範囲について
- Bank Reconciliation(銀行勘定調整表)
突き詰めれば2の分野も1に含まれます。つまり、USCPA試験のCash分野で重要となるのは「どこまでがCashなのか」という点になります。ここを抑えることが重要です。ではそれぞれについて説明していきます。
1.Cashに含まれる範囲について
Cash and Cash Equivalentsという名称の通り、Cashだけでなく、Cash Equivalents(現金同等物)と呼ばれるものを含めて1つのカテゴリーとして取り扱います。試験で重要となるのはCash Equivalents(現金同等物)であり、Cash Equivalents(現金同等物)は、下記の条件を全て満たす場合に該当します。
- 高い流動性(現金化が容易)
- 投資時点で満期日が3ヶ月以内に到来する
- 価値が変動しない(リスクがほぼない)
もちろん、同等物なだけであって、現金ではないという点に注意が必要です。現金にすぐ替えることが出来るという点で、「ほぼ現金」のような性質を持つものが現金同等物になります。
具体的な勘定
Cash Equivalentsの具体例をあげていきます。
- Money Market Fund
- Treasury Bills
- Commercial Paper
- Certificate of Deposit
これらの科目とCashが合わさって、B/S上ではCash and Cash Equivalentsとひとつにまとまった科目として掲載されています。つまり、B/S上にCash and Cash Equivalentsとあれば、上記のような科目が内訳として含まれていることになります。
僕が働いていた会社も、現金のまま保有することは少なく、満期が3ヶ月未満の上記のような金融商品に投資していました。複数の商品に投資するので、エクセルでの管理が非常に面倒だったのを覚えています。それらの合計を「現金及び現金同等物」としてまとめていました。注意点としては、これらの金融商品などが満期が3ヶ月以上であれば、現金同等物とはならないということです。別の勘定科目でB/Sに掲載しなければなりません。
含まれないもの
一見するとCash and Cash Equivalentsのように見えて、範囲には含まれない科目というものも存在しています。それが、以下の科目になります。
- Security Deposit(保証金)
- Compensating Balance
- Bond sinking fund
1つめの保証金は分かりやすいので、後の2つを説明します。
Compensating Balanceとは銀行に対する人質のようなものです。例えば、あなたが銀行から融資を受けるときに「100万ドル融資します。ただ、うちの預金口座に20万ドルは絶対に預けておいてくださいね」となった場合、実質使用できるのは80万ドルであり、この20万ドルは口座に入っているにも関わらず自由に使うことができません。これをCompensating Balanceと言います。
Bond sinking fundは、Bond(社債)を発行したあとに、そのBondの償還に備えて蓄えておくファンドになります。例えば、社債という資金調達手段を用いて5年後に返す約束で100万ドルを借ります。5年後の返済に備えて、毎年20万ドルずつ貯めておく口座があるとします。それは最終的に返済に使用するお金なので、自由に使うべきではありません。このような用途で貯めているものをBond sinking fundと言います。
つまり、「自由に使用できない」性質を持つものはCash and Cash Equivalentsに含めることが出来ません。これによりB/Sを見た人が、自由に使える現金が少ないにも関わらず「お、この会社は現金をたくさん持っているので安心だ」と勘違いすることを防ぐことが出来ます。
次は、Bank Reconciliation(銀行勘定調整表)について見ていきます。
2.Bank Reconciliation(銀行勘定調整表)
Bank Reconciliationとは、「会社の帳簿上の現金残高」と、「銀行側より送られてくる残高証明書」に記載されている預金残高に差額がある場合、それの原因を探るために必要な表になります。普通に考えれば両者は一致するはずなのですが、いくつかの理由により一致しない場合があるのです。そのズレの原因を解消することで、残高の一致を目指します。試験ではもちろんズレているのが基本です。
調整方法のコツ
現金残高の調整方法にはいくつかの方法があるのですが、重要なポイントとなるのが、「調整を会社側(per Book)から行うのか、銀行側(per Bank)から行うか、どちら側も見るのか」ということです。下記に必要となる調整項目をあげていきますが、会社側から調整を開始するのか、銀行側から調整を開始するのかで、必要となる調整が変わってきます。以下では、会社側からの調整と銀行側からの調整で良く出題されるものについて説明していきます。注意点としては「銀行側」と書いていますが、実際は「銀行側から見た会社の口座残高」になります。
1.会社側(per Book)から調整
・Note Collection:会社側残高にプラス
銀行側が、会社の代わりにNote Receivableを回収し、口座に入金として処理していたという情報になります。会社側が知らない間に入金があったということで、会社側の残高にプラスとなります。もちろん、銀行側はすでにプラスにしているので何も変更しません。
・Interest earned:会社側にプラス
利息収入になります。銀行にお金を預けていた場合、銀行側が利息として支払いをしてくれます。その情報になります。会社側は銀行からの通知により初めて利息収入を知ることになるので、会社側の残高にプラスとなります。こちらも同じく、銀行側はすでにプラスにしているので何も変更しません。
・NSF Check:会社側にマイナス
NSFとは、Not Sufficient Fundsとなり、預金不足という意味です。NSF Checkは「預金不足小切手」というものになります。これは、会社側に対して第三者の会社や個人が小切手を切ったのですが、最終的に現金化出来なかった小切手のことになります。会社側はすでに現金の増加としていたのですが、現金化は出来なかったので、現金残高をマイナスにする必要があります。もちろん、銀行側は何もしていないので、何も変更する必要がありません。
・Bank Service:会社側にマイナス
銀行に支払う手数料です。銀行側は勝手に預金口座から引き落とす形で手数料を回収しているので、会社側は残高証明書で初めて気が付くことになります。そこで、手数料分のマイナス調整を行います。もちろん銀行側ではすでにマイナスにしているので、これ以上の変更は行いません。
2.銀行側(per Bank)から調整
・Deposit in transit:銀行側にプラス
会社が夜間に入金の処理を行ったり、郵送で入金処理を行う手続きを取ったため、銀行側に情報がまだ届いていないものになります。会社側は処理と同時に残高をプラスにしていますが、銀行側は入金が確認できるまで入金処理は行わないので、この差を埋めるために銀行側にプラスします。もちろん会社側はすでにプラスにしているので、何も変更は行いません。
・Out Standing Check:銀行側にマイナス
会社側はビジネス上、小切手を切ることによってすぐに預金残高のマイナスとしますが、この切った小切手は受け取った相手の会社が銀行に持ち込んで始めて入金(こちらから見ると出金)となるため、小切手を切ってから実際に出金されるまでの時間差があります。この時間差によって、会社側では現金のマイナスにしているのに銀行側では(相手が小切手を持ち込むまで)まだ出金の処理は行っていないので差額が発生します。その差額を埋めるために、銀行側からマイナスを行います。もちろん、会社側では何も変更しません。
以上が、USCPAの問題で良く発生する現金の調整内容なのですが、これら以外にもマイナーな調整はいくつもあるので、それは問題集を解きながらひとつずつ覚えていく必要があります。実務とは少し違う面もありますが、そこは試験なので割り切りましょう。注意すべき点は、会社側から調整しているのに、会社側の残高からOutstanding Check分を引いたりする間違いです。問題文をよく読んで、どちらの残高を基準にしているのかをまず把握するようにしましょう。
以上で、USCPA講義の現金及び現金同等物を終わりたいと思います。次は「売掛金」となります。