こんなプロジェクトには近づくなという話
さて、皆さんの中にはこのブログを読んでからUSCPAに合格し、もしくは合格しなくても監査法人のアドバイザリー部門に転職された方、もしくはこれから転職するつもりの方もいらっしゃると思う。え?いないって?そんなこと言わずに一度門戸を叩いても良いのではないだろうか(圧)
ただ、やはりアドバイザリー業務というものはクライアントから求められる水準が高いので成長できる、1社にいながら色んな企業の経験が出来るなど良い面もたくさんあるものの、プロジェクトによって当たり外れがあることも事実だ。僕もこれまでのアドバイザリー経験から、数多くのハズレ案件に携わることができた。本当に感謝している(錯乱)
そこで、これから監査法人のアドバイザリー部門を目指すあなたのために、アドバイザリー部門に転職できたとしても、こんなプロジェクトには注意しようということを書いていきたいと思う。これは普通のコンサル会社にも当てはまるポイントがあると思うので、コンサル業界に入りたい人も参考にしてほしい。では、早速具体的な話に入っていきたい。まずは、どのようなケースがあるのかリスト化してみた。もちろん一部だけなので、これでヤバいプロジェクトが網羅されているわけではない点に注意だ。
- ケース1:孤軍奮闘
- ケース2:放置プレイ
- ケース3:イカれた要求水準
- ケース4:動物園
- ケース5:古代兵器
タイトルだけで不穏な空気が漂うのがわかる。一つ一つどのようなプロジェクトなのか説明してきたい。
※さて、今回の内容はタイトルからもある通り、普通に個人の経験からくる愚痴を記事に昇華するものです。場合によっては表現方法が汚い(バカとかクソとか)場合もありますので、そういう表現が苦手な方はここでブラウザバックを推奨します。
ケース1:孤軍奮闘
これはタイトルからみてわかりやすいと思う。プロジェクトと言いながら、気が付いたら作業から会議、成果物の提出まで自分一人でほぼ全ての仕事をこなしていることを意味する。多くの場合、無能な上司のもとでのプロジェクトで発生しやすい事態となる。
基本的にプロジェクトというのは複数人で実施するものが多く、かなり少ない単位でみても作業者とレビュワー(確認者)、そして何もしないパートナーの3名体制となる。ただそこまで関与人数が少ないプロジェクトというものはあまりなく、一般的な規模のプロジェクトだと作業者が複数人いて、そのレビュワー兼プロジェクトマネジメント係、そして報告を受けるパートナーというのが基本的な形となる。
ただ、気が付いたら作業からクライアントとの調整、そして成果物の作成まで自分1人でこなし、パートナーや名前だけ入っているレビュワーに成果物の確認依頼をしても反応なし、もしくは「確認しました。」と何を確認したのか一切不明なゴミのような反応しか返ってこない状況になっていることがある。「あえて成果物の内容をゴミのようなものにしてレビュー依頼に出して、本当に確認しているのかを確認してやろうか?このタコ野郎が」と邪悪な思いが頭をよぎることになるが、もちろん僕は善良な社会人なのでそんなことはしない。
こうなるとクライアント側も、実際に作業している人にだけ連絡すれば良いや、となりがちなので、ますます自分のところに情報が集まってくるようになる。こうなると完全に悪循環だ。仕事を振ってくるクライアントと、仕事に近づかない上司たちにより自分のところに仕事が公園で食パンを投げたときのハトのように群がってくることになる。
解決策としては、作業者として誰かを自分の下につけてもらう、もしくは上司にもう少し関与を依頼するなど、とにかくメンバーを増やす方向に軌道修正するしかないのだが、そもそもそのようなクソ上司の下で働きたいという人が少ないので選択肢が少ない、かつ予算もあまりないのでメンバーを増やせないという残念な状態であることが多い。
また必死こいてスケジュールを調整し、何もしないバカな上司に情報を共有すると、作業はしないのに口だけ出すというビジネス書に登場する絵に描いたようなクソ対応を目の当たりにすることになり、さらにストレスが加速することになる。
こういうプロジェクトの場合、頑張れば頑張るほど自分のところにのみ仕事が集中することになるので、解決策としてはその上司との関係を出来る限り早く切ることがあげられる。ただ、こういう上司の場合は下に人がついていることがあまりないので、何も知らない人がメンバーとして確保され、次の被害者になるということを繰り返している。とは言え君が被害者を続ける必要はない。さっさと抜けよう。
ケース2:放置プレイ
次のケースはどちらかというと下の職階であるスタッフやアソシエイトと呼ばれる職階のときに発生する「放置プレイ」という状況である。そして書いた後に気が付いたが、これはプロジェクトというよりはアドバイザリー業務あるあるなだけかもしれない。
もしかしたらうちの法人だけかもしれないが、転職してアドバイザリー部門に入った後、簡単な転職者用の研修を受けた後は特に何かインストラクションがあるわけではなく、急にやることがなくなるのである。そして少しの間放置された後に、人事担当から「〇〇プロジェクトにアサインされました。担当のジョブのマネージャーは〇〇さんです」と連絡があるのだが、そこからその人から連絡が来るわけでもなく、放置プレイに突入することになる。自分から連絡を取って良いのかわからず、本当に何をしたら良いのかわからず放置されることになる。ちなみにこの裏側では担当のジョブのマネージャーさんが必死こいて日常業務を回しているのでその人に連絡を取る余裕がなく、やむなく放置プレイとなっていることが多い。
そしてようやく連絡が取れたと思ったら「依頼できる作業が見つかったらまた連絡しますね。今はここに格納されているフォルダの資料を読み込んでいてください。」という指示を出されて終わる。今度は「放置モード:資料読んでいてねバージョン」に突入する。どこまで資料を読み込めばよいかもわからず、そもそも読み込むってなんだ、全て理解しておけということか、と頭でいろいろとぐるぐる考えてしまう。
ようやく作業を振られたと思ったら、特段プロジェクトの背景や現在の状況、どのようなことを自分に期待されているかを説明されないまま、誰にでも出来そうな作業だけ説明され、「完了したら連絡ください^^」といいまたマネージャーは去ってしまう。リモートになってからは事務所に行けば直接話せるということもなく、ただ言われた作業だけを愚直に進めるだけになる。当然のように完了してから提出しても「ありがとうございました!確認しますね」とだけ返事が来て、次に何をすれば良いかまた放置モードに突入するのだ。
そのまま同じようにプロジェクトが進み、気が付いたら終了し、また次のプロジェクトのお誘いを待つ。次のプロジェクトのお誘いが来ると上記のまた繰り返し、、、
定型的な業務が少ないアドバイザリー業務では、新人(というかプロジェクトに新しく入ってきた人)をどこまで手厚くサポートするかは完全にそのプロジェクトにいる人たちに任せられることになる。マジでサポートを一切考えていないプロジェクトもあり、「ついてこれない場合は勝手に抜けてもらって、ついてこれる奴だけが生き残る」という北斗の拳も真っ青なスタンスのだったりする。
これはプロジェクトを推進するマネージャーやメンバー側の問題でもあるが、こういった状況に陥った場合に使えるのは「とりあえず自分からなんでもいいから関与する」という姿勢を持つことだ。「議事録取るんで会議でていいっすか」「なんでもやりますよなんかないっすか」とか、隙あらば仕事をするという姿勢でいると、忙しいプロジェクトで必死こいている人には良い人物に見られやすい。
※そういうプロジェクトから抜けたい場合はそのままひっそりと過ごしていると、プロジェクト側から「この人はもういりません」という感じで切り離される。
ケース3:イカれた要求水準
僕個人としてはこれが一番嫌なパターンだ。これは内部、外部でもあるのだが、今回は外部(つまりクライアント)の要求水準がイカれている場合の話をしたい。
基本的にアドバイザリー業務は、クライアントから最初「こういうことに困っています。提案書を出してください」という話が誰かに持ち込まれ、その困っていることのアドバイザリーを専門にしている部隊のパートナーに話が行き、そのパートナーが鼻息を荒くしながら担当のマネージャーやディレクターに提案書を書かせ、クライアントがそれを見て(基本はコンペでいろんな法人と争う)「んじゃお願いしますわ」となりそこから契約書の締結に入る。ここで契約書の中で、「〇〇の支援」ということで監査法人側の業務内容をしっかりと協議して固めるのである。簡単にいうと、契約書以外の業務はやりませんできませんというわけだ。
ただ、たまにクライアントには、というかクライアントの一部には「外注先には金払ってるんだからいつ何を頼んでもOK」と勘違いしているアレな人が混じっていることがある。自分のカウンターパートがこういうタイプになった場合がこの世の終わりという状態になり、当たり前のように契約外のことを依頼してきたり、金曜の夜に「週明けまでに教えてください」と依頼を振ってきたりする。契約書の内容など知ったこっちゃないわけだ。
ちなみにこういう人物に限ってなぜか監査法人側では「面倒だけどあの人をどうにかすれば仕事が進むキーパーソン」という捉え方をしたりしているので、当然の用にイカれたクライアントの要求を満たすことを内部でも要求してきたりする。アドバイザリー業務が激務になりやすいのはこういう勘違いをしている人がクライアントにいることがあるからであり、こういうクライアントに対応するために長時間勤務や週末出勤を繰り返した人は「他人もこれくらいやるのが当然」という思考回路になりやすく、社内のパワハラ系統に順調に育っていくことになる。
こういうプロジェクトに入ってしまった場合は、心が折れる前に抜けるという選択をするのが最善の策だと思う。逃げのように見えるかもしれないが、自分の心が折れた場合にそれをリカバリーするのは本当に時間がかかる。僕も何人も心が折れた人を見てきたが、復帰してからも「なんとなく不安定な人」という評価になるのは避けられないので、その前に抜けて普通のプロジェクトに行って普通の評価を貰った方が100倍マシだ。
ケース4:動物園
これは超大規模なプロジェクトになった場合に発生する現象なのだが、あまりにも規模が大きいプロジェクトになると、1つの部門、もしくは1つの法人でリソースを賄うことが出来ないため、他部門(例えばツールを専門にしている部門、リスク管理を専門にしている部門、内部統制を専門にしている部門など)、そしてコンサルティング会社(Big4にはそれぞれ監査法人とは別にコンサルティング会社もある。エンロン事件を忘れたか)と共同でプロジェクトを進めるということがある。
こうなるとプロジェクト管理が最重要な要素としてあるのだが、ここで問題となるのが「誰がプロジェクト管理をするのか」ということがどの程度序盤にきっちり固められるか、という点である。傾向的に言うと、プロジェクト管理はコンサル側が行い、専門知識が必要となる領域は監査法人側が進めるという形で切り分けられることが多い。
問題となるのはその切り分け方があいまいになり、指示系統もよくわからない状態になってしまった場合である。特に規模が大きいプロジェクトについてはルールを最初に設定し、全員でそのルールをどれだけ面倒でも遵守しながら進めるということが必要であり、また、どの領域の人がどのようなタスクを進めるのか、他の領域の人たちと共同で進める場合はどのような手順で進めるのか、ということも決めておく必要がある。
だが、そのルールやプロジェクトの進め方がきっちり定められないままズルズルとプロジェクトが走り出すことがある。そうなるともう最悪で、どの領域の人がどの領域まで見るのか、という役割分担があいまいな状態にどのような経路で誰に何を相談したら良いのかがわからず、大量に会議が設定され、グループチャットが乱立し、皆が「こういう風に進めたらよい」という各自の判断で進めるので本当に動物園のように騒がしくなる。
この場合、正解は「またルールを1からしっかり作る」ということなのだが、プロジェクトが走っている状態でそれを実施するのは至難の業となり、結局そのままズルズルと何がどう決まったかが判明しないまま進んでいくことになる。結果として進みが早い領域と遅い領域に分かれ、遅い領域で決まらなければ次に進めない他の領域の人が「あいつら遅すぎてなにしてるんだ」と感じプロジェクト内がギスギスし始める。
こういうプロジェクトに入った場合は、とにかく面倒でも「あるべき」レポートラインで自分だけは仕事をすることをおすすめする。動物園のようにガチャガチャなっているが、プロジェクトで求められる正規のルートでレビューを出し、クライアントに方向性を確認し、着実に進めるということが重要になる。もちろん他の檻の中で進んでいる仕事の進捗によってこちら側の仕事にも影響がでる場合は、檻の様子を伺いながらこちらから情報を提供し、自分の周りだけは動物園にならないように細心の注意を払いながら進めるほうがよい。
ちなみにこのようなプロジェクトは他のケースと違ってさっさと抜けた方がよいとまでは言わないが、自分を評価してくれる人との距離感があまりにも遠い場合は注意が必要だ。例えば自分がスタッフとしてアサインされたけど、自分へ指示だしする人はコンサルのマネージャーということが普通にありえるので、その場合がガチで評価するポイントが違ったり、会社としてその職階に求められる水準が違ったりするので、必死に仕事したとしても全く評価されないということが普通にあり得る。その場合は抜けることを検討しても良いと思う。僕も一度上司がコンサルの人になり、監査法人と全く異なるポイントが評価ポイントであることに驚いた。その人とは仲良くさせていただいたが、評価ポイントが異なるということもあり、その人と話し合った結果、残念ながらそのプロジェクトは円満に抜けるという結果となった。
ケース5:古代兵器
コロナ前から姿を消し始め、コロナ後にはほぼその姿を見ることはなくなったのだが、それでもごくたまに古代兵器に遭遇することはある。そう、パワハラである。もう少し個人的な感覚でいうと、アベノミクス開始辺りはパワハラする人は割といたイメージだが、少しずつ姿を消し、そして2024年現在では本当に姿を見せなくなった(というか人が変わった?)という感じだ。僕が所属している部門でも、昔はパワハラがヤバかったと言われている人が「そうか?」と思えるような人になっていたり、パパママになったら急に丸くなったと言われていたりする。なんにせよ、他人に不快感をまき散らすパワハラクソ人材は消えるのが一番良いと思っている。
ただ、本当にごくまれにいるのだ、パワハラをまだ実施する人物が。以下は簡単な具体例である。
- 「前からずっと言ってるけど」など、いちいちネチネチと枕詞をつけて指摘を始める
- 質問への回答が「この前話したやつです」で終わり
- 大勢の会議で無視
- 露骨な溜息
- 質問がオープンクエスチョンかつ意味不明
- 話が朝令暮改
文字にすると「そこまでかも?」と思えてくるから不思議だが、プロジェクトでこういう人がいると、方向がクライアントへの価値提供から「パワハラ野郎の納得」に切り替わるので、クライアントの期待値とパワハラ野郎の期待値がずれていた場合、その仕事がやり直す必要が生じる。また、仮にクライアントからNoと言われた会議の場にパワハラ野郎がいなかった場合は、Noと言われた説明をしなければならず、その会議の場でまた報告者がつめられてネチネチと言われるという最悪の状態に陥る。クライアントからNoと言われた会議の場にパワハラ野郎がいた場合は「だからこの方向性は違うって言ってたよね」と政治家もビックリの手のひら返しを披露してくれたりする。まさに存在そのものが百害あって一利なしなの存在である。
こういう人物と一緒になった場合、特に直下になり直接やり取りをする必要が生じ、自分の精神にダメージが蓄積されていると感じた場合は、迷うことなく人事に相談する、プロジェクトから抜けると相談するなど、パワハラ野郎とは絶対に仕事を一緒にしないと強い意志を持った方が良い。間違えて耐えながらプロジェクトを完遂したりすると「この人はあの人と一緒に仕事が出来る」と周囲にも認知され、次のプロジェクトもそいつと組まされることになる。まさに壊れるまで使われる生贄として扱われるのだ。それならばパワハラ野郎には誰も寄り付かないというところを見せた方が良い。
まとめ
ということで今回は僕が経験してきたなかでも「こういうプロジェクトには近づくな」という話をしてきた。もちろん多少の脚色はしているが、こういうプロジェクトが危険ということはご理解いただけたと思う。簡単にプロジェクトから抜けたいということは「こいつは少しも我慢できないやつだ」と思われる可能性があるが、上記のようなプロジェクトに居続けて自分が壊れるのが一番の人生におけるリスクなので、そこはうまくマネジメントしてほしい。
とはいえ、そこまでヤバいプロジェクトに当たるということはそうそうなく、基本的には普通の日とヤバい日が連続的にやってくるというものなので、少し気に入らないから抜けるという感じではなく、様子を見ながら「さすがにまずい!」というラインを見定めていくのが良いと思う。
あまりにも頻繁にプロジェクトが嫌だから抜けるということを繰り返していると、全くお声がかからなくなるという空しい事態にもなりかねないので、まずは自分として出来ることをやり、それでも上記のような状況が続いてどうしようもないとなったときに行動に移すのが一番よいと個人的には考えている。
この記事を読んで「アドバイザリー業務やめよっと」と思う人が出ないことを祈る。変なプロジェクトに当たったら大変だが、基本的に経験値を貯めるという点においてはめちゃくちゃおすすめなので、ぜひ門戸を叩いてほしい。