【書評】多眼思考
旧ブログから加筆・修正して転載。今回紹介する本は、あらかじめ何かを目的として記載されたものではなく。一人の人間のツイートを集約したものになります。こちらになります。
この本の著者は、僕が社会人として羽ばたき始めた時に(それより前かな?)知り、それからずっとひっそりと尊敬している「ちきりん」さんです。「ちきりん」とはかなり昔からのブロガーであり、常に自分の思考をブログに無料でアップしている方です。ネットの(ブロガーの)世界では結構有名な方ではないでしょうか。ブログに書く内容がかなり面白く、本を何冊も出版しています。
さて、「ちきりん」さんに関してですが、ブログを読んだ方ならわかると思いますが、自分で考えて、自分で答え(仮説)を考え出すことが出来る人です。そして、その考えた結果が非常に面白い。よくそんなこと考えられるよなぁと思うようなことをブログに残していて、非常に多くの読者を獲得しています。
自分で考え抜いたことを特にマイルドにすることなくズバッと書いてしまうので、たまに(よく?)炎上も起こしてしまっていますが、本人は全く気にしていないと思います。というよりも、もしいちいち炎上を気にしていたら、あそこまでPVがあるブログを書き続けることなんてできないでしょう。怖気づいて何も書けなくなってしまいます。
そんな「ちきりん」さんによる今回の本ですが、冒頭に記載の通り、この本は「本」というよりはちきりんさんの膨大な「ツイート」から、様々な分野について抜き出したものになっています。ツイートといえばツイッターを見れば無料で見ることができるのですが、そんなものに対してお金を払って買っても良いものか、と思っていたのですが、読んでみて驚きました。お金を払う価値は十分にあると言えます。
短文であるツイートというものをいくつかの分野に絞って抽出することによって、その人物が数ある分野に対して何を考えているのか、そしてそれらをさらに集めることによってその人物がどのような人物なのかを浮かび上がらせることに成功しています。一見すると短い文章の集まりなのですが、それらを一貫して世界の様々な分野に対する独特な考え方に触れながら、その発言者がどのような人物なのかを深く知ることができます。
加えて、数多くの分野に対する著者のツイートを見ていると、それらの分野についていかに自分が思考してこなかったかを思い知ることになります。むしろ、どれほどの時間をかけて思考することによってこの本にあるレベルまでアウトプットすることが可能なのでしょうか。著者の今までの思考時間を考えると気が遠くなりそうです。
一定上の時間を思考することに費やしている人がどのような発想を持ちうるのかを確認できるという点においても、この本を一読する価値はあります。自分は普段から思考していると思う人は、まずはその思考がはっきりとした輪郭を持つレベルまで考え込まれているのかを考えてみるのも良いと思います。やはり、アウトプットまでたどり着くのは相当な難しさだと思います。
ちなみに「ちきりん」さんは昔、今後は難しい人向けにかかれた難解な書物と、漫画で分かるような簡単な書物に分かれていくという分析をしていました。当時の僕は「んなあほな。」と思っていたのですが、今や「マンガでわかる!」系の本は書店である程度の規模まで拡大してきています。なんてこったい。
まだツイートを集めたような本といった珍しいタイプの本は少ないと思いますが、本も様々な方面に挑戦してほしいですね。
ではでは。