【書評】金融の世界史

監査法人として割と多くの金融機関と関わることになったので、金融機関の勉強をしようと考えました。どのように勉強するか考えたときに、まずはざっくりと金融の歴史について知っておこうと思い手に取った本が、今回紹介するものになります。それが、こちらの本になります。


金融の世界史: バブルと戦争と株式市場 (新潮選書)

金融について知ろうと思って手に取ったのですが、本を読んで最も感心したのは、これまで自分が学んできた「会計」や「簿記」という学問の深さ・重要さについてでした。もちこの本には金融の歴史が書いてあるのですが、もちろん「金融」は実務があって初めて成り立つものなので、実際の貿易の発展、そして商売に関わる在庫や現金などの資産管理における発展についても記載がなされています。その中に、読んで大きく衝撃を受けた記載がありました。その箇所を軽く引用してみたいと思います。

「この資料では、ダティーニの帳簿が一三八四年を境に単式から複式簿記に変化しています。また不動産および有形資産では現代の会計処理方法である減価償却やアモチゼーション(債券の償還差損を期間按分して簿価を平均的に下げていく)の技法も見られ、回収不能債権はきちんと損失として認識されています。」

この箇所に関しては本当に感心しました。1384年といえば、600年以上も昔の話です。日本では室町時代で、この頃(1397年)に金閣寺が建てられたといわれています。それほど昔から、減価償却などの会計方式が編み出されていたということです。僕のUSCPA勉強時代に何も考えずにひたすら解答していた仕訳そのものが、数百年以上も昔にすでに海外で実務として行われているという事実に、非常に感動を覚えました。割と新しい分野だと思っていた会計というものは、実際には数百年の実務に裏付けられた歴史を持つ学問なのだと思います。これは感慨深いですね。

 

当然ですが、会計学は現実社会の実態をさらに正確に示すために様々な変化を遂げて、現代では数百年前と比べると複雑な処理になっていると思いますが、会計のひとつの役割である「物事の価値を測る」という部分は昔から変わらず保ち続けていると思います。少なくとも600年以上も実務に寄り添い熟成されてきた学問である会計学。勉強しているときから、よくこんな素晴らしいシステムを考えたなぁと常々感じていたのですが、やはり結構深いですね。

 

今、USCPAや簿記などを学んでいる人も、一見無機質で単調に思えるかもしれませんが、自分が学んでいるものに誇りを持って良いと思います。誰がどう思ったとしても、この学問は数百年以上の歴史を持ち、人々の商売の実務、そして生活の発展に貢献している分野です。素晴らしいですね。

 

あまり金融に関係ないことを書いてきましたが、この本では金融の歴史に加えて、各方面の様々な分野の知識も得ることができてよかったです。普通に読み物としても金融の側面から人類の発展を垣間見ることができ、非常に有意義でした。人類は僕が想像していたより昔からしっかりとした資産管理を行っていたようです。世界の大半が資本主義に突入する前は、人類はお金に関してあまり関心が無く、もっと適当に生きていると勝手に考えていましたが、大きな誤りでした。

 

今回の本を通して、何か一つの分野に焦点をあてて、その分野に関する歴史を学ぶと非常に役立つことがわかりました。他にも有名な本などを購入して、読んでみたいと思います。と思ったら、この著者に関してはもう一冊の本のほうが高評価のようです。


日露戦争、資金調達の戦い―高橋是清と欧米バンカーたち (新潮選書)

そのうち、こちらも読んでみたいと思います。

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