【書評】マーケット感覚を身につけよう

前のブログより加筆・修正を行い転載。

僕は尊敬する人はそこまで多くありません。自分で行動したり、発信したりする人を尊敬する傾向にあるのですが、今回はそんな僕が尊敬する「ちきりん」さんの著書である「マーケット感覚を身につけよう」を読んだので、その書評を書いてみようと思いました。実は、この本が出版される前から、ちきりんさんがtwitterを通して「これからの時代に必要なのはマーケット感覚だと思う」といった内容(あいまいですが、こういった内容)を何度か呟かれていて、「マーケット感覚とはなんだろう」と妙に心に残っていました。聞いた感じ、何となくどのようなものか想像は可能ですが、ちきりんさんにしっかりと考えを聞いてみたいと常々思っていました。

そんな中、ちきりんさんから、これまで知りたいと思っていたことに対するズバリ直球な名前の本が出版されたということで、速攻で購入しました。そして、購入した日に読み終えたのですが、不思議なことが起こりました。なんと、すぐにでも書こうと思っていた書評が書けないのです。

著者であるちきりんさんは長年ブログを続けておられ、しかもそのブログの記事はご自身で考えた内容をしっかりと整理されているので、文章の書き方や伝え方が非常に洗練されています。つまり、僕のような凡人に伝えることが難しい内容でも、非常に簡単にわかるように伝えるのが上手なのです。そのため、この本を読んでいると、その内容について特に深く考えることが無くてもスラスラと読むことが可能です。そして、ここからは僕の悪い癖なのですが、本を読んだ後に(本を読んだだけで)あっさりと成長した気分になってしまいます。本を読んだだけでは成長は無く、本を読んだ後に行動に移すことによって初めて成長がある。多くの本を読んで僕が得た結論がこれなので、よく本を読んだ後に書評を書くようにしています。この本を最初に読み終えた後も、書評を書こうと思いました。しかし、マーケット感覚について理解したつもりになっているけども、何となくしっくりこない。この本はスラスラと読むことが可能ですが、自分がまだあと何段階か深く理解するべきことまでくみ取れずに、重要な要素を置いてきているような気がしました。本当に理解しているのだろうかという気分になったのです。

例えるならば、財務分析や自分の仕事で関わっている分野などについて詳しく教えて、と言われれば普通に話せるけど、この本の内容である「マーケット感覚」について教えて、と言われると何となく、ぎこちなくなら話せるという状態です。普段の僕であれば、そのままの理解の状態でも無理に書評に書いたりする(というか基本そう)のですが、今回はできませんでした。というか、何となくもったいない気がして、そうしませんでした。少し迷走してきましたが、何が言いたいかというと、読んだ後すぐにもう一度読みました

もちろん同じ本を2回読み終えたからといっても、まだ深く理解できていないと思いますが、さらに読みながら書評を書くことによって、マーケット感覚についてもう少し理解を深めていきたいと思います。この本を読んだ人にはわかると思いますが、「とりあえずやってみる」の精神です。

<マーケット感覚について>

著者はマーケット感覚のことを、「はじめに」において「価値を認識する能力」としています。さらに序章で「顧客が、市場で価値を取引する場面を、直感的に思い浮かべられる能力」としています。そのあとからも、マーケット感覚という能力について色々な面から丁寧に説明がなされます。「はじめに」にある金塊と赤ちゃんを使った例は、これまで文章を積み重ねてこられた方ならではで、非常に上手いなぁと感心します。

こういったあいまいな概念上の能力という記載にすると、「そんな能力は先天的なものであり、自身の力では鍛えられない」と思われるかもしれません。僕自身、そういう特殊(に聞こえる)な能力はもともと生まれつき備わっているもので、後から鍛えてどうにかなるものではないと考えていました。ところが、著者は「一般の人でも鍛えられる」バッサリと甘えを切り捨てます。それだけであれば「あ、そう」となりがちですが、なんとこの能力を具体的に鍛える方法が1つの章を丸々使って、5つも紹介されています(しかもこの紹介する章が本の内容で一番分厚いです)。この章は何度も読み返して、自分の人生への組み込み方を考えた方が良いと思います。特に、僕のような組織に属しているサラリーマンは、当然ですが組織内の論理に振り回される傾向にあります。究極的に大事なのは組織ではなく一人の人間として市場から求められることのはずなのに、上司に気に入られるためだけに力を入れているようでは、所属する組織が誤った方向に進んだ際に危険です。

<マーケット感覚を鍛える>

この章で紹介されている「マーケット感覚を鍛える方法」のうち、「市場に評価される方法を学ぶ」に関しては、このサイトを運営していて本当によかったと思いました。今はまだどのようなコンテンツを拡充していくか検討中ですが、この本を読んでから、あえて1つに絞らずに、色んなことに挑戦するのも悪くないと思いました。この点に関しても、今後に活かしておこうと思います。インプットとアウトプットのバランスが大事ですから。

また、僕の持つ資格である米国公認会計士として、本で紹介されている「市場脳」と「規制脳」の違いについては非常に考えされられるものがありました。詳しくは書けないですが、業務の都合上、僕の頭は思いっきり規制脳に傾いているので、常に意識して市場に触れるようにしておかないと、何事も規制や罰則で解決を図ろうという人間になりかねないと恐ろしくなりました。監査法人には「規制脳」の人、本当にたくさんいますから・・・。

ここでふと思ったのですが、どうして、ちきりんさんは「ちきりん」という事象を通して世の中に情報を発信しているのか。世の中の普通の人のように、自身の名前を公表してしまった方が有名になったり、ファンからちやほやされてたりと割とお得なこともあるはずです。ここからは「ちきりん」という事象を考察するため、「さん」はつけずに記載していきます。ご了承ください。

<ちきりんの価値>

もちろん知らない人も多くいるとは思いますが、「ちきりん」とは、ある種のブランドとなっています。当然ながら、このブランドとなっていることに価値があると思います。ちきりんによる活動を考えてみると、以下に集約されると思います。

  • ブログで発信する情報がユニークであり、読者数を考慮するとプチメディアのようである
  • ブログでおすすめする商品がちきりんが考える「良品」であり、プチ商社のようである

この情報伝達手段(メディア)と、商品の流通経路(商社)の2点が、無理矢理にでも要約した場合の「Chikirinの日記」及び「ちきりんセレクト」といった、ちきりん発信情報に付随している価値となります。

上記にも書いた通り、どうして著者本人は表にでて活動しないのか、不思議に思っていました。基本的には本人を全面に出した方が顔が見えるので信頼しやすく、自身も有名になるし、それによりお金も入りやすくなります。ところが、この本を読むことにより、何となくですが著者が「ちきりん」という媒体を通して世の中と触れ合っている理由がみえてきました。

現状、著者にとって「ちきりん」が持つ価値は、「著者本人が、最も市場に近い箇所に存在できること」なのかもしれません。著者本人は特に世の中では有名ではないため、普段街中を歩いていても、買い物していても、通行人に話しかけられるわけがないですし、好きな時に好きな場所にいくことが可能です。さらに、特定の業者と著者が親密になる可能性も少ないので、自分が好きな意見を書くことができます。

こういっては失礼ですが、仮に書いたブログが炎上した場合でも矛先は媒体である「ちきりん」に向かいますし、仮にブログを書くことが面倒になり突然やめても、読者は本当の著者は誰かわからないため、「ちきりん」に文句を言うことしかできません。こう考えると、「ちきりん」を通した情報発信がかなり優れた戦略であることがわかります。こういった、市場に触れあうための媒体としてキャラクターを使用することが有効であることをブログ開始当初から見通していたとすれば、「ちきりん」恐るべしです。

長々と書いてしまいましたが、それだけ考えさせられる内容の本でした。僕もこれからは組織で働くのに加えて、このサイトを通して市場にもしっかりと触れていようと思います。

おすすめです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)