組織のネットワークを活性化させるには
◆はじめに
監査法人で働いていてよく聞く言葉が「自分の部門で何をしているかは、何となくわかる。プロジェクトのこともわかる。でも、他の部門やプロジェクトは何をしているかがさっぱりわからない。他のプロジェクトの人とも交流がしたい」というものです。
この「他の部門の人と交流したい」という意見は、ある程度大きな組織に所属すると多かれ少なかれ存在すると思います。僕は監査法人でプロジェクトに参加していますが、その傍らで人事に関するサポートも行っているので、こういった意見は良く耳にします。アンケートを撮った場合でも、部門を超えた交流やプロジェクトを超えた交流への要望が一定以上のニーズとして存在します。
僕個人の意見としては「他の部門やプロジェクトに興味を移す前に、自分の目の前にある仕事に全力で取り組んで成果を上げてみてはどうでしょうか。成果を上げることによって充実感も味わえるし、尊敬もされて居心地がよくなり、他のことなんてどうでもよくなるかもしれませんよ」というものなのですが、もちろんそんなことは口が裂けても言えないので、色々と部門やプロジェクトを超えた企画などを考えるわけです。
ところが、そういった企画を行ってみると、ニーズの獲得票の割には参加者が少ないことがわかります。色々と部門やプロジェクトを超えた企画が行われるのですが、いざ参加の希望アンケートを取ってみると大多数の人々が「不参加」を表明します。あれあれ?他の部門の人と交流したいとニーズを上げる人は、どうして参加しないのでしょうか。
◆普通の人の発想
僕は「普通に他の部門の人の話を聞いてみたり、交流したりするのは構わないけど、それは漠然とそう思っているだけであって、実際にそういった企画を立てられても自分がアクションを起こる必要があれば面倒なので困る。」と大多数の人が思っていると考えています。なぜなら、僕自身がそういった立場の人間だからです。他の部門の人と交流したいですか、と問われれば「Yes」になりますが、交流の場を設けましたので来てください、と言われれば面倒くさいのです。
冷静になって考えてみると、一部の人間をのぞいて、大多数の人間は初対面の人に囲まれて何かを行うのは得意ではないのです。自己紹介から始まり、所属や参加しているプロジェクトがどのようなものか説明したり、よく知らない相手の話を聞いたりといったことは、非常に面倒なことなのです。そのようなことをするくらいなら、普段から一緒にいる部門やプロジェクトの人と気軽に交流していた方が楽なのです。ここに、組織のネットワークを活性化させるヒントがあると考えられます。
◆部門間の交流を活発にするには
もし、部門間やプロジェクト間での交流を行いたい場合は、逆説的ですが、まずは所属部署内での交流レベルをある程度以上まで引き上げれば良いと思うのです。例えば部門内、そしてプロジェクト内全員で行くランチに1,000円の補助をつける、などの施策を行います。
すると、プロジェクト内(ここからは部門内も含めてプロジェクト内、と記載します)では普段からランチに一緒にいく人がいる場合、特に気を使うことなくプロジェクト内の全員ランチに参加することが出来ます。なぜならそこには普段から一緒にランチに行っている人がいるからで、その人以外にただ人が増えただけだからです。参加までの心理的ハードルが非常に低いのです。そして、そのランチの場で、いつもとは違う人との交流が発生します。さすがにいつもいっている人だけと会話するわけにはいかないので、半ば強制的に色々な人との交流の場が生まれるわけです。
◆最終目標
このような、プロジェクト内での交流をある程度活発にさせることによって、長い時間をかけてプロジェクト、部門を超えた交流が可能になります。というのも、時間が経てば、プロジェクト内である程度仲良くなった人が別のプロジェクトに移ったり、別の部門に異動したりします。そうしてはじめてプロジェクト、部門を超えたつながりが生まれることになります。過去に仲が良かった人から、別のプロジェクトや部門の話を聞く、というのが、最も単純で簡単な部門、プロジェクトを超えた交流の発生方法になります。それ以外に強制的につながりを発生させようとしても、結局人は居心地が良い場所にとどまる傾向があるのでうまくいきません。うまくいくとすれば、それはよっぽどコミュニケーション能力が高い人なのでしょう。
少なくとも僕の場合は、研修などで少しだけ知り合いになった別プロジェクトの人と後日に廊下ですれ違うと結構気まずいです。他のプロジェクトで交流を取りやすいのは昔所属していたプロジェクトの日とか、もしくは以前に同じプロジェクトに所属していて、今は別のプロジェクトで働いている人です。
部門、プロジェクトを超えた交流がないと嘆く人事の人。まずは部門、プロジェクト内部で完結する施策を取ってはいかがでしょうか。