交渉力
今回読んだ本は、橋下徹氏による「交渉力」です。「交渉」と言われると、相手を言い負かすみたいで何となく嫌だ、苦手だという人がいるかもしれませんが、そういう人にこそおすすめな本となっています。
この本における「交渉力」とは、「話をまとめる」ことであり、必ずしも相手を言い負かすといったことを意味しません。むしろ、話をまとめる能力は社会人としてある程度キャリアを積んでいくと必ず必要になるものであり、部下や上司との調整で何となく「どうすればもっとうまくやれるだろうか」と悩んでいる人にとっては最高の教科書になります。
学びや感想など
いきなりですが、この本から僕が得た最も重要なことを書いていきます。それは、交渉で最も大事なことは、以下の2点に集約されるということです。
- 自分の要望を予め整理すること
- 絶対に譲れないラインを把握すること
「え?こんな簡単なこと?」と思われるかもしれません。しかしハッキリ言って、僕は自分の要望を完璧に理解している人、そして「これだけは譲れない」というラインを自分で設定している人は全人類の5%にも満たないと思っています。もしあなたがすでにこれらについては問題なく出来ているとすれば、相当な交渉能力をお持ちだと言えます。大多数の人間はなんとなく「それなら良い」「それはいやだ」という感覚で物事を判断しています。
具体的な話をすると、僕は最近中古マンションを購入したのですが、マンションを探し始めた時、自分の要望を完全には把握できておらず、もちろん絶対に譲れないラインなんてものは無かったので、「何となく気に入らない」という理由で購入を見送ったマンションがありました。つまり、話がまとまらなかった(=交渉が決裂した)わけです。今になって思うと、僕が何となく嫌だと感じていた箇所は購入した後からいくらでも変更可能なものであり(食洗器がついてない等)、それ以外は自分の要望に沿った物件でした。その時に購入を決めていなかったツケとして、その後1年以上にわたり物件を探し続けていたため、その期間の家賃や住まいの満足度で大きく損をすることになりました。この本を早く読んでいれば、そんなことにはならなかったのですが。ちなみに、マンションに関しては「自分の要望」「譲れないもの」を自分で考えて整理したので、最終的に納得するものを購入することが出来ました。
他にも交渉術として、以下の手法が書かれています。
- 利益を与える/譲歩する
- 合法的な脅しを使う
- お願いする
それぞれの手法について、彼の弁護士、知事、市長時代の貴重な(読めばわかりますが本当に貴重)経験をもとに、具体的に書かれています。それぞれの手法について「なるほどねぇ」とうならざるを得ませんが、それを度外視しても、彼の人生に起こって出来事の裏話を垣間見ることが出来るだけで、十分に読む価値はあります。交渉術を勉強しつつ、政治の大舞台の裏事情を知ることが出来る、こんな本は他に無いでしょう。もちろんこれ以外にも、交渉に行き詰まったときに取るべき手法(要素を分解する等)といった細かいテクニックまで網羅されています。ただ、僕にとってはまだ早いので、まずは交渉前に「自分の要望を整理する」「絶対に譲れないラインを設定する」ことを徹底していこうと思います。
控え目に言って、めちゃくちゃおすすめです。